（１５） （１５）
| 15-1銀行の経営は15-2他人（たにん）任せにしていたから15-3うまくいかなかったが、15-4政治の運営は、15-5この十年、15-6ほぼ非の打ちどころがない。15-7ベネチヤ、15-8ミラノとの同盟に15-9ナポリを加え、15-10教皇庁との関係も15-11友好に固まったから、15-12イタリヤに平和が保たれ、15-13外敵も侵入の機会を見出せない。15-14ロレンツオは15-15市民の娯楽に意を用い、15-16祝祭を盛大に盛り上げて、15-17フィレンツェの宿痾（しゅくあ：長い間治らない病気）であった15-18派閥闘争を忘れさせようとした。15-19カーニバルの山車（だし）は、15-20フィレンツェ美術の巨匠たちの彫刻や15-21絵で飾られ、15-22祭の歌はロレンツオ自身が作詞に当たる。 15-23彼は15-24十五世紀イタリヤ文学を代表する詩人の一人であり、15-25カーニバルのために書いた詩は、15-26ルネサンス文学中の絶唱（ぜっしょう：非常にすぐれた詩歌）といわれる。 15-27若いっていいもんだ。 Quant'e bella giovinezza, 15-28けれども花はすぐに散る che si fugge tuttavia! 15-29遊びたいなら今のうち Chi vuol esser lieto,sia: 15-30確かな明日はないものを di doman non c'e certezza. ---「物語（７）ミケランジェロ」の詩の再出 15-31その詩のリフレーン（詩歌や楽曲の各節の終りの部分をくり返すこと。また、そのくり返し部分）を15-32若者たちは愛唱した。 15-33だが、サボナローラにとって、15-34これほどけしからぬ思想はなかった。15-35フィレンツェの若者から15-36質実の気風（きふう）を失わせ、15-37遊惰（ゆうだ）に導き、15-38信仰をないがしろにさせ、15-39それによって15-40自家（じか）の支配を15-41安泰（あんたい）にいしようとしているのだと、15-42この修道院長は考えていた。15-43このような支配は15-44打倒（だとう）しなければならぬ。15-45彼の説教は激しさを加え、15-46一部の市民は15-47彼の思想に惹（ひ）かれ始めている。 15-48ボッテイチェルリは15-49すでにサボナローラの教（おしえ）に帰依（きえ）して、15-50メディチ文化を否定し始めたし、15-51哲学者ピーコ・デラ・ミランドラも同様の道をたどり、15-52ロレンツオの師であった15-53フィチーノすら動揺（どうよう）を隠しきれない。15-54それに最近ではあのミケランジェロ少年すら、15-55こっそりサボナローラの説教（せっきょう）を15-56聞きに通っているようだ。 15-57だが、話せばわかるはずだ、15-58向こうが信仰と15-59道徳を基礎として考えているのなら、15-60こちらも信仰と15-61道徳に基づいて説けばよいのだ。15-62心を開いて話し合うことができれば・・・・。15-63だが修道院長は15-64彼と個人的に話し合うことを避けた。 15-65いつまで待っても院長は挨拶に出てこない。15-66晴れていた空に15-67にわかに雲が立ちこめ、15-68時ならぬ嵐の気配（けはい）がする。15-69ロレンツオは腰を挙げ、15-70ゆっくりと帰路に就いた。15-71まだ機会はあるだろう、15-72まだ・・・・。15-73どこからか歌声が響く、15-74確かな明日（あす）はないものを、15-75確かな明日はないものを・・・・。 15-76その一年後の１４９２年４月９日、15-77ロレンツオ・デ・メディチ没。15-78二年後の１４９４年、15-79フランス軍大挙してイタリヤに侵攻。15-80同年メディチ家は追放され、15-81サボナローラが、15-82フィレンツェ共和国の政権を握る。15-83この年を境に、15-84イタリヤの命運は転落の一途（いっと）をたどる。 |
| （１７）航海者コロンブス |
| 謝辞ミチオ・自己研鑽資料 |
| 2016/5/3 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表 笹倉正義 通称：「オリジナル教会」 「ささくら修道会」 2017/3/3 |