（９）極貧の裡(うち)に

9-1アテナイ人諸君、この穿鑿（せん、うが・つ）、（さく、ざく、うが・つ）（せんさく：細かいことまで探り調べること）の結果私に対して多くの敵が出来た。9-2しかもそれは最も悪辣（あくらつ）な最も危険な種類の者である。9-3すなわちその結果、彼らから多くの誹謗（ひぼう）が起り、9-4また私が賢者であるという評判もひろまるに至ったのである。9-5なぜかといえば、傍聴者（ぼうちょうしゃ）はいつでも、9-6私がある事について他人に他人に彼の無知を論証するとき、9-7その事において私自身は賢者であると信ずるから。 9-8しかしながら、諸君、真に賢明なのは独り神のみでありまた彼がこの神託においていわんとするところは、9-9人智の価値は僅少（きんしょう）もしくは空無であるということに過ぎないように思われる。9-10そうして神はこのソクラテスについて語りまた私の名を用いてはいるが、9-11それは私を一例として引いたに過ぎぬように見える。9-12それはあたかも、「人間たちよ、汝らのうち最大の賢者は、9-13例えばソクラテスの如く、自分の知恵は、9-14実際何の価値もないものと悟った者である」9-15とでもいったかのようなものである。 9-16それだからこそ私は今もなお神意のままに歩き廻って、9-17同市民であれまたよそ者であれ、9-18いやしくも賢者と思われる者を見つければ、9-19これを捉（とら）えてこの事を探求しまた闡（セン、ひら・く）明（せんめい：今まではっきりしなかった道理や意義をあきらかにすること）しているのである。 9-20そうして事実これに反することが分かれば、9-21私は神の助力者となって、9-22彼が賢者でないことを指摘する。9-23またこの仕事あるが故に、9-24私は公事においても私事においてもいうに足りるほどの事効を挙ぐる暇なく、9-25神への奉仕の事業のために極貧の裡に生活しているのである。

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2014/10/17 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 通称：オリジナル教会