（５）デルフォイの神

5-1ここにおいて諸君の中には、5-2恐らく次のように詰問する人もあるであろう。5-3「しかし、ソクラテス君、君はいったい何を業としているのか。5-4君に対するこの悪評はどこから起ったのか。5-5君はきっと何か世間並外れた業に従事していたに違いない。

5-6君が大多数の人と何も違った事をしなかったのならば、5-7君についてこれ程の名声と評判とが立つはずは決してなかったであろう。5-8だから、事の次第を話してもらいたい、5-9私達は君について私自身の憶測に耽（ふけ）っていたくはないのだから」と。

5-10思うにかくいう者は正当である。5-11だから私は、何事がかかる名声と悪評とを私にもたらしたか、5-12それを諸君に説明してみようと思う。5-13どうか御静聴を願いたい。5-14恐らく諸君の中には、私は冗談をいっているのだと解する人があるかも知れないが、5-15しかし信じていただきたい、私はまったくの真実を語ろうとしているのである。

5-16アテナイ人諸君、私がかかる名声を博したのは、5-17ただ私に一種の知恵がある為なのである。5-18しからば一体それはいかなる知恵であるか。5-19思うにそれは一種の人間的知恵であろう。5-20そういう知恵なら、私も実際持っていると自ら信じているのだから。

5-21これに反して前述の人たちは恐らく超人間的知恵をでも持っているであろう、5-22私はこうでもいうより外に言葉を知らない。5-23私は実際そういう知恵を持ってはいないのである。5-24それにもかかわらず私にそれがあると主張する者があるならば、5-25彼は嘘（うそ）をつくのである。

5-26そうして私を讒謗（ざんぼう）せんがためにそんなことをいうのである。5-27そこで、アテナイ人諸君、私が何か大言（たいげん）を吐（は）くように見えることがあっても、5-28どうか邪魔をしないようにしていただきたい。5-29なぜならば、私のいおうとするところは、私の言葉ではない。5-30私は充分信頼すべき一人の証人の言葉を諸君に伝えようとしているのである。

5-31すなわち、私の知恵に関する−−−5-32もしそれが実際知恵といえるものならば−−−5-33またその性質に関する証人として私はデルフォイの神を立てる。

5-34思うに諸君はカイレフォンを知っておられるに違いない。5-35彼は青年時代から私の友であると共にまた民党の諸君の友でもあった、5-36そうして一時民党と亡命を共にしまた諸君と共に帰ってきたのである。5-37そしてカイレフォンはどんな男であったか、5-38彼は何事をするにもいかに激情的であったか、それは諸君も御存知のはずである。

5-39彼はかつてデルフォイにおもむき、5-40次の如き問に対して神託を求むるの大胆を敢えてした−−−5-41が、前にも申した通り、諸君、どうぞ静粛に聴いていただきたい。5-42即ち彼は、私以上の賢者があるか、5-43と伺（うかが）いを立てたのである。5-44ところがそこの巫女（みこ：ピュティア）は、5-45私以上の賢者は一人もないと答えた。

5-46この事についてはここにいる彼の弟が保証するであろう。5-47カイレフォン自身はすでに死んでいるのだから。 
 
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デルフォイの神　Wikipedia
デルポイは、古代ギリシアのポーキス地方にあった都市国家（ポリス）。パルナッソス山のふもとにあるこの地は、古代ギリシア世界においては世界のへそ（中心）と信じられており、ポイボス・アポローンを祀る神殿で下される「デルポイの神託」で知られていた。

日本語では「デルフォイ」「デルファイ」と表記されることも多い。
 
 
 
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2014/10/16 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義
通称：オリジナル教会