（２７）罰の逆提義

27-1こういういい方をすれば、恐らく諸君は、27-2前に私が憐憫（れんびん）と哀願とについて語ったときと同じように、27-3それは傲慢（ほうまん）から来ていると感ぜられるでもあろう。27-4しかし、アテナイ人諸君、それはそうではなくて、むしろこういうわけである。27-5私はいかなる人に対しても決して故意に不正を行ったことがないと確信している。

27-6が、しかし諸君にはそれを信じさせることが出来かねる、27-7というのは私達の語り合う時間があまりに短かったからである。27-8それは、私の信ずるところでは、27-9もし他国人におけるが如く諸君の間においても、27-10死活に係わる裁判はただ一日で決定すべきではなく、27-11それには多くの日数を費やさねばならぬという掟があったならば、27-12諸君にも多分信じさせることが出来たであろうと、思われるからである。

27-13だが、しかしこんな短時間の間に、これほど重大な誹謗を雪（そそ）ぐことは容易ではないのである。27-14こういうわけで私は決して何人にも不正を行わないと自ら確信しているが故に、27-15私はまた、自分自身に不正を行って、自分は何か悪報を当然受くべき者であるかのように自ら罪を宣し、27-16そうして私に対してそれ相応の罰を提議するが如きことは、思いも寄らないのである。27-17しかも一体私は何を懼（おそ）れてそんなことをしようぞ。

27-18それともメレトスが私に課せんとして提議するものに−−−27-19私自身はそれが果たして福なのか禍（わざわい）なのかわからないと自白しているものに−−−27-20出遭うことが懼ろしいとでもいうのか。27-21その代りに、わたしはそれが禍なことを熟知している罰を自ら選んで、27-22これを自分に課するように提議すべきであるのか。

（１）投獄
27-23例（たと）えば投獄はどうだろう？27-24しかし牢獄において、その時々の官吏、27-25すなわち十一獄吏の奴隷となって生活して、どうするというのだろう？

（２）罰金
27-26それとも罰金刑か、そうしてそれを払ってしまうまでは獄にいるのか。27-27しかしそれも結局私には前にいったのと同じ事である。27-28私にはそれを払うだけの金がないのだから。
（マタイによる福音書）
（８）5-25あなたを訴える者と一緒に道を行く時には、その途中で早く仲直りをしなさい。そうしないと、その訴える者はあなたを裁判官にわたし、裁判官は下役にわたし、そして、あなたは獄に入れられるであろう。5-26よくあなたに言っておく、最後の一コドラントを支払ってしまうまでは、決してそこから出てくることはできない。

（３）追放
27-29それとも私は追放の刑を提議すべきであろうか。27-30想うに諸君が私に下さんとしている判決は恐らくこれであろう。27-31けれども、私と同市民の諸君さえ、私の行動と談論とに耐えかねて、27-32今はついにそれを除かんとするようになったほど煩わしく憎々（にくにく）しく思われるものを、27-33他国人ならむしろ容易にそれを堪（た）えるだろうなどと期待するほど私が理性を失っているとすれば、27-34私の生に対する執着は非常なものといわなければなるまい。27-35アテナイ人諸君、そんなことは思いも及ばない。27-36私が、この歳（とし）になって、追放の身となり、町から町へ漂白して、27-37至るところで追払われつつ一生を送るとすれば、私を待受けているものは結構な生活と申すべきであろう。

27-38なぜなら、私がどこへ行くにしても、ちょうどここと同じように、27-39青年たちが私の言説を傾聴するであろうことをよく知っているからである。27-40そこでもし私が彼らを遠ざけるならば、彼らはその長老を動かして私を追放するであろう。27-41もしまた私が彼らを遠ざけないならば、彼らの父老や一族は彼らのために同様のことをするであろう。
---ソクラテスの救い難い、性（さが）を感じて、鬱陶（うっとう）しいことだ。
 
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2014/10/20 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義
通称：オリジナル教会