（２２）傍聴席の面々

22-1しからば長年月を私の仲間になって暮すことが或る人達を喜ばせるのはそもそも何故（なぜ）であるか。22-2アテナイ人諸君、諸君はすでにそれを聴かれた。22-3私は諸君に向って一切の真実を告げた。

22-4すなわち賢明と自惚（うぬぼ）れながら賢明でない人達が吟味（ぎんみ）にかけられるところを傍聴することを彼らは興（きょう）がるのである、22-5それは決して不愉快なことではないのだから。

---ここが、ソクラテスの変なところである。これは、ソクラテスが突然他流試合を申し込んで、油断している相手を打ち負かす。恥をかかされて憤（いきどお）る者をみて、傍観者はやんやの喝采を送る。これは、一種の余興である。恥をかかされた方は、不愉快きわまりないであろう。

22-6ところが私にとっては、私の主張するように、22-7この使命は神託や夢想やその他およそ神意が人間に何事かを命ずるあらゆる方法によって神から授けられたのである。22-8アテナイ人諸君、これは真実でもあり、22-9また容易に証明し得ることでもある。

22-10何となれば、実際私がもし青年の或る者を腐敗させる者もしくは腐敗させた者であるならば、22-11彼らのうちすでに壮年に達して、22-12その若年時代に私から悪い助言を受けたことを悟った者は、22-13今やここに来て、私を訴えて、22-14私に復讐しなければならないはずである。

22-15もしまた彼ら自身はそうすることを欲しないにしても、22-16その家族の或る者、すなわち父や兄や他の親戚などは、22-17彼らの一族の者がはたして私から禍（わざわ）い蒙（こうむ）っているのならば、22-18今それを想起して復讐するに相違なかろう。

22-19実際見受けるところ、ここにはそれらの人が随分たくさんいる。
22-20まず第一にはクリトン−−−22-21私と同年輩かつ同郷の旧友で、22-22そこにいるクリトブロスの父、

22-23次にはスフェットス人リュサニヤス−−−22-24あそこにいるアィスキネスの父、


22-25それからそこにいるケフィシヤ人アンティフォン−−−22-26エピゲネスの父。

22-27さらにここには上に述べたようなふうに私と交っていた人達の兄弟諸君も見える。

22-28ニコストラトス−−−22-29テオゾティデスの子で、22-30テオドトスの兄（テオドトスは死んでしまったから、この場合には彼が兄にせがんで訴（うったえ）をやめてもらったわけはないのである）。

22-31それからそこにいるパラロス、22-32テモドコスの子で、22-33テアゲスの兄弟。22-34こちらにいるアディマントス−−−22-35アリストンの子で、22-36ここにいるプラトンの兄。22-37それからアィアントドロス−−−22-38ここにいるアポロドロスの兄。

22-39なおこの外にも、私は諸君に多くの人の名を挙げることができる。

22-40誰かその中の一人を証人として、22-41メレトスは少くとも自分の演説中に特に挙ぐべきはずであった。22-42しかし、彼がもしあの際にそれを忘れたのならば、22-43彼は今でもいいからそれを挙げるがよい−−−22-44私はそれを容認する−−−22-45そうしていうが好い、彼に何かそういう種類のものの持合わせがあるならば。

22-46しかし諸君、諸君かこれと正反対の事実を発見されるであろう。22-47彼らは皆むしろ私を援助しようとしているのである−−−22-48メレトスやアニュトスの主張に従えば、22-49彼らを腐敗させ、22-50彼らの一族の者に禍（わざわい）を与える者は私であるのに。

22-51なるほど腐敗させられた者自身は、22-52あるいは私を援助すべき理由を持っているかも知れない。22-53しかし腐敗させられなかったすでに年歯の進める彼らの親族は、22-54真実にして公正なる理由、22-55すなわち、メレトスは嘘を吐いて私は真実を語っていることを、知っているということ以外、22-56私を援助すべき他のいかなる理由を持っていようぞ。
 
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2014/10/19 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義
通称：オリジナル教会