（２１）教授にあらず

21-1さて諸君にお尋ねするが、21-2私が政治に携わってしかも有徳な人にふさわしきが如くに行動し、21-3正義に与して、これを−−−当然の事ながら−−−何物よりも重視したとして、21-4それでも私はなおこんなに長い歳月を無事に生きながらえることが出来たろうと信じ得られるか、21-5出来ないにきまっている、アテナイ人諸君。21-6けだしそれは他の何人にも出来なかったであろう。 21-7ところが私は、御覧の通り、私の一生を通じて、21-8公人としても（いやしくも公に活動したときには）、私人としても、21-9この態度を変えぬ一人の男である。21-10私は未だかつて何人（なにびと）に対しても、他の市民のみならず私の誹謗者が私の弟子と呼んでいる人達の一人（ひとり）に対しても、21-11正義に反して少しの譲歩をしたこともないのである。 21-12しかるに私は、未だかつて何人の師にもなりはしなかった。21-13ただ私は、私が自分の使命を果さんとして語るとき、21-14誰かそれを聴くことを望む者があれば、21-15青年であれ老人であれ、21-16何人に対してもこれを拒むようなことはしなかったのである。 ---青年はプラトン、老人はクリトンといった具合であろう。 21-17また私は報酬を得る時には語るが、21-18他の場合には語らぬというようなことはなく、21-19むしろ貧富の差別なく何人の質問にも応ずるのみならず、21-20望む者には私の質問に答えつつ私のいうところを聴くことをも許したのだった。 21-21そうしてこの人達のある者が世を益する人になろうとなるまいと、21-22公正にいえば、私が責任を負うわけはないのである。21-23何となれば、私はかつて何人にも、授業を約束したことも授けたこともないのだから。 21-24またもし誰か、他に誰もきいたことがないようなことを、21-25かつて私から個人的に学んだとか聴いたとか主張する者があるならば、21-26彼は真実を語るのではないことを信じていただきたい。 ---このにせ証言を封印する言葉は、プラトンの思いかもしれない。この「ソクラテスの弁明」は、その目的も持っていると思う。後世、ソクラテスの勝手なイメージが作られることの抑止にもなっている。

次へ

掲載と閲覧・双方の注意事項

１．聖書にならい、信徒間で引用しやすいように文番号が振られていること。

２．この他にも意図的ないくつかの修正がある他に、不注意な入力ミスが考えられること。 　　テキストの正確性を期したい人には、このサイトの閲覧はお勧めできないこと。

３．このサイトの読者は、本の購入者あるいは購入予定者を前提とすること。

４．このサイトの目的は、キリスト教の説明書作成の一環であること。 　　すなわち、どこかで、この書が引用され、キリスト教が低く見られたことの、検証であること。

2014/10/19 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 通称：オリジナル教会