（２０）制止する勇気

20-1この事に関して、私は諸君に有力な証拠を提出しようと思う。20-2それは言葉ではなくて、20-3諸君が尊重するところのもの、20-4すなわち事実なのである。20-5では私の遭遇した話を聴いていただきたい。

20-6それは、私がいかなる人に対しても、20-7死を恐れるために正義に反して譲歩するような者ではない決してないということと、20-8しかも譲歩しなければきっとまた身を滅ぼすに至るであろうということとを、20-9諸君に理解してもらうためである。

---およそ４００年後、パウロは、キリスト教宣教のため、トルコ、ギリシャの地を歴訪した。彼はソクラテスとは真逆を生きたユダヤ人最後の預言者となった。主のために迫害を受けつつ、なお語り続ける者こそ、主の預言者だからである。

彼の受けた迫害の原因は、彼の宣教がユダヤ教という民族宗教の殻を破って、世界宗教へと導くものとなっていたからである。異邦人なるギリシャ人たちは、彼を歓迎したが、ユダヤ教原理主義者からは命を狙われ続けた。主の兄弟ヤコブやヨハネが主導するエルサレム教会は、割礼無用論を展開するパウロにあいそをつかし、カイザリヤの獄に幽閉された彼を見放した。

カイザリヤの獄は二年に及んだが、その後期になると、いらだつパウロから弟子たちは去った。この時期に書いたのが、「ガラテヤ人への手紙」である。パウロは眼病にも苦しみ、また孤独であった。栄光のイエスの使徒パウロを見守ったのはルカであった。ルカは、ソクラテスにおけるプラトンの立場であったもいえる。

（使徒行伝）
26-1アグリッパはパウロに、「おまえ自身のことを話してもよい」と言った。そこでパウロは、手をさし伸べて、弁明をし始めた。26-2「アグリッパ王よ、ユダヤ人たちから訴えられているすべての事に関して、きょう、あなたの前で弁明することになったのは、わたしのしあわせに思うところであります。26-3あなたは、ユダヤ人のあらゆる慣例や問題を、よく知り抜いておられるかたですから、わたしの申すことを、寛大なお心で聞いていただきたいのです。26-4さて、わたしは若い時代には、初めから自国民の中で、またエルサレムで過ごしたのですが、そのころのわたしの生活ぶりは、ユダヤ人がみんなよく知っているところです。

26-19それですから、アグリッパ王よ、わたしは天よりの啓示にそむかず、26-20まず初めにダマスコにいる人々に、それからエルサレムにいる人々、さらにユダヤ全土、ならびに異邦人たちに、悔い改めて神に立ち帰り、悔改めにふさわしいわざを行うようにと、説き勧めました。26-21そのために、ユダヤ人は、わたしを宮で引き捕らえて殺そうとしたのです。

---ちなみに、アグリッパは、ヘロデの家系の者である。彼らは双子の兄弟ヤコブの兄エサウの末裔である。そのエドム人の地は、紀元前１００年ごろ、独立を勝ち取り領土拡大に転じたユダヤに併合された。そして彼らは、改宗のユダヤ人となった。そして、ヘロデはハスモン王朝を倒し、ローマによって、ユダヤ人の王と認められた。

20-10私が諸君に語らんとするところは、20-11法廷においては珍しくない無遠慮なものではあるが、20-12しかし、事実なのである。20-13アテナイ人諸君、私は未だかつて国家における他の公職に就いたことがない、20-14ただ参政院議員になったことがあるだけである。

20-15そうしてたまたま私の属しているアンティオキス族が当番にあたっているときに、20-16諸君は海戦の後で死屍を収容しなかった十人の将軍に対して、20-17一（ひと）からげに有罪の宣告を下すことにきめたのだった。20-18それが違法行為であったことは諸君も後には皆承認せられた通りである。20-19当時にあっては当番議員中ただ私一人が諸君に反対して違法行為に出ないようにと告げたのであった。20-20そうして私はこれに反対の投票をしたのである。20-21すると演説者らは私を告発し拘引（こういん）とする気勢を示し、20-22諸君はまた彼らをけしかけて怒号したけれども、20-23私は、投獄と死刑とを恐れて、20-24違法決議をした諸君と行動を共にするよりも、20-25むしろ国法と正義の味方となってあらゆる危険を冒すべきであると信じたのであった。

20-26これはまだ国家に民主政治が行われている頃に起った事である。20-27しかるに寡頭政治の世となったとき、20-28「三十人」はまたもや私を他の四人と共に円堂（トロス）に召喚してサラミス人レオンをサラミスから、20-29死刑に処せんがために連れて来ることをわれわれに命じた。20-30彼らは、出来得る限り多くの人を自分達と同罪に捲き込まんとして、20-31他の多くの人々にもしばしば同じ様なことを命じたのである。

20-32その時にもまた私は、言葉によってではなく、実行によって－－－20-33もしこういういい方があまり粗野に失しないならば－－－20-34自ら死は寸毫も顧慮しないが、20-35これと反対に、20-36不正と涜神の行為を避けることは何よりも重視する者であることを証示した。20-37あれほど強大な権力をい持っていた政府も、20-38私を威嚇（いかく）して何らの不正をも行わしめることが出来なかった、20-39そうして私達が円堂を出てから、20-40他の四人はサラミスへおもむいてレオンを連れて来たが、20-41ひとり私は家に帰ってしまったのである。

20-42もしあの政府がその後、追いかけて崩壊しなかったら、20-43恐らく私はそのために生命を失っているに違いない。20-44またこの事については多くの人が諸君に証言するであろう。
 
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2014/10/19 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義
通称：オリジナル教会