（２）訴人のねらい

2-1アテナイ人諸君、そこでまず第一に私は、私に対して旧くから提起せられている虚偽の弾劾と旧い弾劾者とに対して弁明し、2-2しかる後に新しい弾劾と弾劾者とに及ぶのが至当であると信ずる。2-3実際旧くから多年にわたって、2-4私に対して全然虚偽のもとをいい触らす多くの弾劾者が諸君の前に現われたのであった。2-5私の彼らを恐るるはアニュトスと彼の徒党と以上である。−−−2-6もとより後者もまた恐るべきではあるが。2-7前者のさらに恐るべきは、彼らが諸君の中の多くの人達をまだ少年であった頃から籠絡して、2-8これを説得し、私に対して全然虚構の罪を負わしめんことを謀り、 2-9ここにソクラテスなる賢者があって思いを天体の現象に潜め地下一切の事象を探求し、2-10悪事をまげて善事となすとあざむいて来たところにある。 2-11アテナイ人諸君、かくの如き風説をひろめた人達こそ実に私の恐れざるべからざる弾劾者である。2-12それは、これを聞く者が、2-13この種の事を探求する者は神々をも信ずるはずがない、2-14と想像するからである。 2-15加うるに彼らの数は多く、2-16彼らの私に対して弾劾の声を揚ぐるや久しく、2-17しかも彼らの諸君に語れるは、諸君のある者はまだ少年であり、2-18諸君のある者はまだ青年であり、2-19最も他の言を信じ易き年頃の時であって、2-20しかも彼らは一人も私を弁護してくれる者のない欠席裁判において私を弾劾したのである。 2-21なかんずく私の最も当惑するのは、2-22ただその中に一人の喜劇作者がいるということを除けば、2-23彼らの名前をすら知り得ずまた挙げ得ぬことである。2-24猜忌と讒謗慾（ざんぼうよく：ざんぼう：人のことをひどく悪く言うこと）とのために諸君を説得せんと試みた人々−−−2-25その外にまた最初に自ら他の説得するところとなり、さらに他を説得した人々−−−2-26なかんずくこれらの人々に対してはまったく策の施しようがない。2-27何となれば、人は彼ら一人をもここに召喚してこれを反駁することが出来ず、2-28弁明に際しても、たとえば影と戦うが如く、2-29何人も応答する者なくして弁駁するより外に全く途が無いからである。 2-30されば諸君もまた、私がいったように、私に対して現れた弾劾者には二種類あって、2-31一は今私を告発せる者であり、2-32他は既述せる如く旧くからの者であることを認められたい。2-33そして私はまず後者に対して弁明しなければならぬという私の意見に同意せられたい。2-34けだし諸君もまた後者の弾劾を、前者のそれよりも以前に、2-35かつ遥かに数多く、聴かれたであろうから。 2-36よろしい。2-37アテナイ人諸君、では私はこれから弁明を行わねばならぬ。2-38そうして諸君が旧くから私に対して抱いているところの疑惑を諸君から除き去ることを試みなければならぬ。−−−2-39しかもきわめて短時間に！ 2-40もとより私は、もしそれが諸君と私との為になるならば、それが成功せんことを−−−2-41そうして私が私の弁明によって何らか相当の効果を収めんことを希望する者である。2-42しかし私は、これは難事であると思う。2-43私は決してこの事件の性質を誤測するものではない。2-44いずれにもあれ、事件をして神の御心のままに成り行かしめよ。2-45とにかく私は国法に従い、そうして弁明しなければならない。

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2014/10/15 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 通称：オリジナル教会