（１４）国家の神々

　（１４）国家の神々

14-1とにかく、アテナイ人諸君、私が前にもいったように、14-2多くといわず少なくといわずメレトスがかつてこれらの事を心配しなかったことだけは今や明白である。14-3が、しかし、メレトス君（くん）、君（きみ）は私がどんなにして青年を腐敗させると主張するのか、14-4それをきかせたまえ。

14-5君の訴状に従えば、14-6それは明らかに、私が彼らに、14-7国家の認める神々を認めないでその代わりに他の新しい神霊（ダイモニヤ）を信ずるように、14-8と教えるからなのだろうね。14-9私が彼らを腐敗させるのはかくの如き教えによると君はいうのだね。

14-10「さよう、断乎（だんこ）として私はそう主張する」。14-11しからば、メレトス君、今ちょうど論題に上っている神々にかけて、14-12もっとはっきりと私および列席の諸氏に語りたまえ、14-13私には君のいうところがわかりかねるのだから。

14-14君の主張はこうなのか。14-15私はある神々の存在に対する信仰を教えている、14-16すると私自ら神々の存在を信じているわけで、14-17全然たる無神論者ではなく、14-18この点において罪ある者ではないが、14-19ただ私の神々は国家の信ずるところのものではなく、14-20他の神々であると主張するのか、4-21そうしてちょうどこれが他の神々を信ずるという君の詰責（きっせき）を招くゆえんなのか。14-22それとも君はまた、私が総じて神々を信じない者で同様の事を他人にも教えると言うのか。

（ガラテヤ人への手紙）
2-15わたしたちは生まれながらのユダヤ人であって、異邦人なる罪人ではないが、2-16人の義とされるのは律法の行いによるのではなく、ただキリスト・イエスを信じる信仰によることを認めて、わたしたちもキリスト・イエスを信じたのである。

14-23「後者を私は主張する。貴君は総じて神を信じないのだ」。14-24君は驚いた人だね、メレトス君。14-25どういう積りで君はそんなことを主張するのか。14-26そんなら君は私が、14-27日輪も月輪も神であることを、14-28他の人々のようには信じないというのか。14-29「ゼウスにかけて然り、14-30法官諸氏よ。14-31彼は日輪を石と、月輪を土と、主張するのだから」。

14-32親愛なるメレトス君、君はアナキサゴラスを訴えるつもりなのか。14-33君はこの人達を馬鹿にしきって、14-34彼らはクラゾメノス人アナキサゴラスの著作がこの種の説で充たされていることを知らないほど14-35無学だと思っていられるのか。

14-36するとまた青年が私から学ぶといわれているところの知識というのは14-37オルケストラへ行って高々一ドラクメも出せば時折買うことの出来るもので、14-38従ってソクラテスがそれはわが物であるらしい顔をするならば－－－14-39ましてそれはきわめて変妙な説なのだから－－－14-40彼を嘲笑する種とすることが出来るようなものなのか。

14-41では、ゼウスにかけて、14-42君は本当に、私がそれほどに全然神々の存在を信じないと思われるのか。14-43「確かにゼウスにかけて。14-44貴君は全然それを信じていない」。

14-45信ずべからざる人だね、君は、メレトス君、14-46思うに、君自身にとっても実はそうなのだろう。14-47アテナイ人諸君、実際この人は極めて高慢な放恣（ほうし：恣はシ、ほしいまま：勝手気ままでしまりのないこと）な人と見える、14-48そうして彼がこの訴状を起草したのも単にこの高慢と放恣と14-49および青年の出来心との故だと思われる。

14-50なぜかといえば、彼は一つの謎をかけて人を試みんとする者のように見えるからである。－－－14-51「賢人ソクラテスは私が冗談をいっていることと、14-52私が自家撞着（どうちゃく：トウ、ドウ、つ・く：矛盾、前後がくいちがってつじつまが合わないこと）をいっていることを見抜くだろうか、14-53それとも私は彼と他の聴衆とを欺きおおせるだろうか」と。14-54なぜといえば彼の訴状の中には自家撞着があると思われるからである。14-55あたかも彼は「ソクラテスは罪ある者である、14-56彼は神々を信ぜざるが故に、しかも神々を信ずるが故に、」といっているかのように。14-57ところがこれはただ冗談にのみいい得ることである。

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2014/10/19　（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義
通称：オリジナル教会