（１３）メレトス君

13-1さて、メレトス君、ゼウスの神かけて、もう一ついってもらいたい。13-2一緒に住むのには、善良な市民と邪悪な者とどちらが好かろうか。13-3友よ、答えてくれたまえ、別にむずかしい問（とい）でもないのだから。13-4悪人は常にその隣人に悪事を、13-5善人はこれに反して善事を行うではないか知らん。13-6「確かにそうだ」。13-7そんなら周囲の者から益よりもむしろ害を受けることを欲（ほっ）する者が世の中にあろうか。13-8友よ、答えたまえ。13-9法律が答えることを君に命じているのだよ。13-10世に誰か害を受けることを欲する者があろうか。13-11「ないにきまっている」。

13-12そうか、では君が私をここに引張り出したのは、13-13青年を腐敗させたり悪い人間にしたりすることを、13-14私が故意にするからなのか、13-15それともその積りなしにするからなのか。13-16「故意に、と敢えて私は主張する」。

13-17驚いたね、メレトス君、13-18君はそんなに若くても、13-19こんなに老齢の私よりも遥かに賢明で、13-20悪人はいつでも自分に最も近い人に悪事を行い、13-21善人は善事を行うことを知っているのに、13-22私は、私との交際ある誰かを悪に導けば、13-23私自身も彼から害を加えられるという危険があることもわからないのみではなく、13-24君の主張するところによれば、13-25しかも故意にこの非常な禍害を自ら招いているほど愚をきわめているのだろうか。13-26そんなことは信ずることができない、メレトス君。

13-27また、思うに、他の何人も信じないであろう。13-28むしろ私はおよそ青年を腐敗させる者でないか、13-29もしくは腐敗させるとすれば、13-30故意でなしにする者であるかのいずれかである。13-31したがって君は両者いずれの場合においても嘘を吐いていることになるのである。13-32ところが、もし私が故意でなしに腐敗させているなら、13-33そのような不本意の過失の故に私をここに引出すのは当を得ない。13-34むしろ君はひそかに私を呼んで私に教示と訓誨（くんかい）とを与うべきであった。

13-35で、もし私が納得できたなら、故意でなしにしている事をやめるのは明らかだからである。13-36しかるに君は私に近寄ることをも、13-37私を教戒することをも厳に避けかつ拒み、13-38その代わりに教戒よりも処罰を要する者にふさわしいこの場所に、13-39私をひき出したのである。
---詭弁がある。ソクラテスは、自分の言動を、若者がその未熟なままに、まねすることは、予見できたはずである。なにしろ、最高の知恵者なのだから。有閑の青年たちが、労働者や、知識人の知識の吟味をしてまわることは、害悪ではないのだろうか。暇人が、たとえ知恵者ぶっているにせよ、その人を吟味するなど、ゆゆしき害悪である。

また、ソクラテスは、自分の言動をギリシャ神の神託と思っているし、弁論においては日常そればかりしているソクラテスを説得するなど不可能である。

（ソクラテスの弁明）
17-51そうして私の息と力との続く限り、17-52知恵を愛求したり、17-53諸君に忠告したり、17-54諸君の中のいかなる人に逢っても常に次の如く指摘しつつ、17-55例の私の調子で話しかけたりすることをやめないであろう。
 
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2014/10/19 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義
通称：オリジナル教会