（１２）馬の調教師

12-1こちらへ出たまえメレトス君、12-2そうしていってくれたまえ、12-3君が最も重きを置くのは、12-4青年が出来得るかぎり善良になることなのだね、そうだろう？12-5「その通り」。12-6それなら列席の諸君にいい給え、12-7青年を善導する者は誰であるかを。12-8君はきっとそれを知っているに違いない、12-9それが君にとって大切な事なのだから。12-10実際君は彼らを腐敗させる私という者を発見したといって、12-11私をここに引出し、12-12私を告発するほどなのであっる。

12-13さあいってくれたまえ。12-14善導者の名前は誰であるかを、12-15そうしてそれを裁判官諸君に告げたまえ。12-16メレトス君、君は黙り込んで一語をも発することが出来ないじゃないか。12-17それは恥ずべきことであり、12-18またこの問題が少しも君の関心を感ずるところではないといった私の主張の充分な証拠であると君は思わないのか。12-19良き友よ、さあいってくれたまえ、彼らを善導する者は誰であるか。

12-20「国法だ」。12-21いやいや、私はそれを訊くのではない、12-22優れたる友よ。12-23何よりも先ず君のいう国法なるものを知っている人間は誰なのか。12-24「ソクラテス君、そこにいる裁判官諸氏だ」。12-25メレトス君、何をいうのだ。12-26この人達に青年を教育したり善導したりする力があるというのか。12-27「勿論（もちろん）」。12-28みんななのか、それともある者は善くしある者は善くしないのか。12-29「みんなだ」。

12-30ベラの神かけて、12-31これは聴きものだ。12-32すると善導者は随分（ずいぶん）沢山（たくさん）なわけだ。12-33それではもっと伺（うかが）いたいが、12-34ここの聴衆もまた彼らを善導するのか、12-35それともしないのか。12-36「彼らも同じことだ」。12-37では、参政官は？12-38「参政官も同じこと」。12-39メレトス君、でも国民議会の議員たちは、12-40青年を腐敗させているようなことはないか。12-41それとも彼らも皆青年を善導するのか。12-42「彼らも同じこと」。

---ベラの神とはどの神だろう。Wikipediaにヘラならあったが・・・（抜粋）
（１）ヘーラー（古希: ΗΡΑ, Hρα, Hērā）は、ギリシア神話に登場する最高位の女神である。長母音を省略してヘラとも表記される。

（２）ヘーラー　オリュンポス十二神。オリュンポスの女王。ゼウスの后。婚姻と家庭の女神。（ヘラ）

（３）オリュンポス十二神
ゼウス 、 ヘーラー
アテーナー、 アポローン
アプロディーテー 、 アレース
アルテミス 、デーメーテール
ヘーパイストス 、 ヘルメース
ポセイドーン、 ヘスティアー


12-43すると、私を除いたアテナイ人はみんな彼らを善良かつ有徳にするのに、12-44ただ私ばかりが彼らを腐敗させるように見えるね。12-45君の説はそうなのか。12-46「いかにも、私の説はその通りである」。12-47君の認められる通りなら、12-48私は非常にみじめな人間だ。

12-49だが一つ答えてくれたまえ、君は馬の場合にもまた同様だと思うのか。12-50あらゆる人間が彼らをよく躾（しつ）けて、12-51ただ一人だけが彼らをいけなくするのか。12-52むしろその正反対に、12-53彼らをよく躾けることが出来るものはたった一人かもしくはごく少数の人すなわち調馬師だけで、12-54大多数の人が彼らを取扱ったり使用したりするとかえってそれを悪くするのではないのか。12-55そうなっているじゃないのか、ねえメレトス君、12-56馬や、他のあらゆる動物の場合には。
---ソクラテスは、有閑の青年（自由市民）と家畜や競走馬を引き合いに出したが、これはずるい。家畜にたとえるなら、それの相手は奴隷でなければならないだろう。有閑の青年（自由市民）は調教できないが、家畜と大差ない扱いの奴隷は調教の対象であろうから。

12-57君やアニュトス君が反対するにしろ賛成するにしろ、12-58それはきまりきっている。12-59もし青年を腐敗させる者がたった一人で、12-60他はみんな彼らを善導する者だったら、12-61彼らはさぞ幸福であろうのに。12-62よろしい、メレトス君、これで充分にわかってしまった。12-63君が決して青年の事を心配していなかったことは。12-64また君がそのために私を告発した事柄について、12-65自分では何も心配していなかった無頓着（むとんちゃく）も、12-66明らかに暴露（ばくろ）してしまった。 
 
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2014/10/18 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義
通称：オリジナル教会