（１４） （１４）
| （１４）希代のプレイボーイ 14-1しかし、今やブラガディン家の庇護（ひご）を受ける身となったカサノバは、14-2生計（せいけい）のための芝居小屋勤（つと）めをやめて、14-3心おきなく享楽（きょうらく：思うままに快楽を味わうこと）に耽（ふけ）った。14-4祝祭、14-5賭博、14-6旅行、14-7それにもちろん情事（じょうじ：セックス）。14-8不可抗（ふかこう：天性）の魅力を備えた14-9プレイボーイの名声（めいせい）をかち得たのはこの頃である。 14-10高貴な奥方や姫君も、14-11商人の妻や庶民（しょみん）の娘も、14-12あらゆる階層の女性が入れ替わり立ち替り14-13ジャコモの閨房（けいぼう：寝室）に姿を見せた。14-14彼は美しい女性であれば身分（みぶん）差別など認めなかったし、14-15相手の女性も彼の身分など問わなかった。14-16だが、愛の一夜が過ぎると、14-17たちまち彼の心は冷め果てる。14-18誘惑し征服すること、14-19それだけが彼の情熱の対象であり、14-20持続する愛など彼には無縁だった。 14-21カサノバの女性誘惑術はまさに神技（かみわざ）だったので、14-22彼の魔手に陥ったのは14-23決してベネチヤの女だけではない。14-24旅行先のパリでもウィーンでも、14-25彼はどんどん女性を征服し続けた。14-26修道女（しゅうどう・じょ）も例外ではない。14-27カテリーナ・カプレッタという美しい尼僧（にそう）を夢中（むちゅう）にさせたが、14-28ついでに彼女の同房（どうぼう）のマリヤ・マッダレーナもものにした。 14-29ところがこの尼僧は14-30ベネチヤ駐在フランス大使（たいし）ドベルニスの愛人であって、14-31ジャコモを大使に引き合わせた。14-32この大使もたいへんなプレイボーイだったから、14-33二人はたちまち意気投合（いき・とうごう）した。14-34ドベルニスは単身赴任（たんしん・ふにん）で独身アパートに住んでいたが、14-35そこで行われる乱交（らんこう）パーティは巷（ちまた）の噂（うわさ）の的（まと）だった。14-36カサノバはこのアパートの常連（じょうれん）となり、14-37彼の色魔（しきま）ぶりはますます奔放（ほんぽう）となった。14-38十八世紀のベネチヤでは14-39乱交パーティなど日常茶飯事（さはんじ）だったから、14-40大したスキャンダルではなかった。 |
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| 2014/9/1、2016/3/4 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表 笹倉正義 通称：オリジナル教会 |