（２０）国王の晩年(ばんねん)

20-1家庭的には不幸が続いた。20-2将来を嘱望（しょくぼう）された長男は十六歳で夭逝（ようせい）、20-3フランス王孫に嫁（とつ）いだ長女も、20-4スペイン王妃となった次女も、20-5相次（あいつ）いで若くしてみまかった。20-6妻や愛人は信用しなかったから、20-7愛児を失った悲しみを別の愛で埋めることはできなかった。20-8疑（うたぐ）り深（ぶか）く無愛想（ぶあいそう）な性格は、20-9年（とし）とともに圭角（けいかく：言語・動作・性質にかどがあって親しめないこと）を増（ま）した。 20-10ドルメアやボジーノのような側近（そっきん）の臣（しん）にも心を開かず、20-11計画は自分一人の胸に秘めて、20-12実行に移すまでは誰にも相談しなかった。20-13世継（よつぎ）の太子（たいし）となった次男カルロ・エマヌエーレ三世を厳しく訓育し、20-14閣議に列席させ、20-15重臣（じゅうしん）との協議にも参加させたが、20-16会議の後は、20-17たとえどんな重臣であろうと決して信用してはいけないということを、20-18繰り返し息子（むすこ）の胸に叩（たた）き込んだ。20-19彼の人間不信は宗教的信念に近いものがあった。20-20王妃アンナが世を去った後の１７３０年（６４歳）、20-21サン・セバスティアーノ女伯を後添（のちぞ）いに迎えたが、20-22この女性には例外的な信頼を感じていたようである。 20-23再婚の一ヶ月後、20-24サルデーニャ国王ビットリオ・アメデーオ二世は突如（とつじょ）退位（たいい）を宣言した。20-25カルロ・エマヌエーレに王位を譲り、20-26自分は新妻（にいづま）とともにサボイヤに隠居（いんきょ）するというのだ。20-27いかにも奇襲を得意とする彼らしい電撃的な退位だったが、20-28これは彼の生涯（しょうがい）最後にして最大の失敗だった。20-29もう（すぐ）七十歳だから余生（よせい）を平穏（へいおん）に暮らしたいと彼は言ったが、20-30一年も経（た）たぬうちにその平穏が我慢（がまん）できないできない退屈となった。 20-31「新王の政治はなっていない、20-32儂（わし）がもう一度やらなければ」と彼は考え、20-33今度も突如（とつじょ）として行動を起こした。20-34妻を伴ってトリノへ向かったが、20-35途中（とちゅう）チェニジオ峠（とうげ）で妻の助言（じょげん）を求めた。20-36実行前に他人に相談するのはこれが初めてだった。20-37妻は黙（もく）して語らなかった。20-38前王（ぜんおう）は再び答えを求め、20-39妻は再び沈黙した。20-40三度求めて答えは得られず、20-41二人はそのまま旅を続け、20-42誰にも知られずモンカリエーリ城に入り、20-43腹心（ふくしん）の書記に復位（ふくい）宣言（せんげん）を口述（こうじゅつ）。20-44こうして彼は続けて二人の他人に計画を漏（も）らすという、20-45まったく彼らしくないことをやった。20-46そしてその結果は裏目に出た。 20-47報知（ほうち）はたちまち首都（しゅと）に達し、20-48宰相（さいしょう）オルメアは緊急会議を召集（しょうしゅう）。20-49王は父の復位を希望すると言い、20-50涙ながらに懇請したが、20-51オルメア始め重臣（じゅうしん）一同（いちどう）、20-52王の願いを容（い）れなかった。20-53いったん退位なされた以上、20-54前王（ぜんおう）陛下（へいか）といえども王の臣下（しんか）であり、20-55今回の御行動は反逆（はんぎゃく）そのものであります。20-56これを容認するのでは、20-57国家（こっか）は成り立ちませぬ。 20-58こうして二個連隊がモンカリエーリ城を囲み、20-59前王は逮捕（たいほ）され、20-60リボリへ連行された後、20-61シャンベリに幽閉（ゆうへい）。20-62妻の女伯もチェーバ監獄に収容監禁され、20-63数ヶ月の辛（つら）い獄中生活の後、20-64夫のもとへ行くことを許された。20-65老いたビットリオ・アメデーオはこの打撃から立ち直れなかった。20-66臨終（りんじゅう）に一目（ひとめ）我が子に会いたいと願い、20-67息子も父を看取（みと）りたいと思ったが、20-68宰相オルメアはそれにも頑強に反対。20-69とうとう王は父の死に目に会えなかった。20-70苛酷（かこく）すぎると世人（せじん）は非難したが、20-71これはピエモンテがまともな国家になっていたことの証明でもある。20-72国家の利害が王室の利害に優先したのだから。 20-73西暦１７３２年、20-74ビットリオ・アメデーオ二世シャンベリに没す（享年６６歳）。

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謝辞ミチオ・自己研鑽資料

2014/9/1、2016/2/22 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 通称：「オリジナル教会」　「ささくら修道会」 2017/2/22