（１４）エウジェニオ将軍(しょうぐん)

14-1トリノではビットリオ・アメデーオ二世が、14-2相変わらず寡黙（かもく）な策謀に耽（ふけ）っていた。14-3いつものようにフランスとその敵の双方（そうほう）に秘密交渉（こうしょう）を重ね、14-4どちらの味方をするのが得策か天秤（てんびん）にかけていたが、14-5この背信行為（はいしん・こうい）がフランスに知られたからたまらない。14-6全戦線で優位を誇（ほこ）っていた精強のフランス軍がサン・ベネデットを急襲、14-7ピエモンテ守備軍はあっというまに粉砕された。14-8こうなれば急いでオーストリヤ陣営に飛び込むほかはないが、14-9戦備も整えていないのに勝てそうもない隣国に14-10裏切りを見破られたのはまことにまずい。 14-11フランス軍はスザ、14-12ベルチェッリ、14-13イブレアの防衛線を突破して三方から首都トリノに迫る。14-14ビットリオ・アメデーオは母と妻子を逃がして自分は踏みとどまり、14-15必死の防戦。14-16猛砲撃に晒（さら）されながらトリノ市民はよく戦い、14-17出撃を試みさえした。14-18市民ピエトロ・ミッカは地下道を掘って敵陣の下に潜りこみ、14-19胸に抱いた爆弾を炸裂（さくれつ）させて、14-20我が身もろともフランス兵を空中（くうちゅう）に吹き飛ばした。 14-21粘っていれば何とかなるもの、14-22百十七日に及ぶ流血と飢餓（きが）の抵抗の末、14-23弓（ゆみ）折（お）れ矢（や）尽（つ）きる寸前（すんぜん）のトリノに、14-24待ちに待ったエウジェニオ・ディ・サボイヤの援軍が到着した。14-25公はひそかに首都を脱出、14-26援軍と合流。14-27フランス軍総勢四万七千、14-28対する救援軍は三万に満たぬ。14-29だが、エウジェニオ将軍の天才はその差を補って余りがあった。 14-30戦史に残るこの戦闘はわずか数時間で決着がつき、14-31フランス軍の完敗に帰す。14-32ビットリオ・アメデーオ公とエウジェニオ将軍は、14-33長い祝賀行列に迎えられて大聖堂へと進み、14-34感謝の祈りを神に捧げた。14-35この勝利はフランスの太陽王に痛打を浴びせ、14-36戦局全面転換の契機となった。14-37その七年後の１７１３年、14-38ユトレヒト講和条約が成立して、14-39十年間のスペイン継承戦争に幕が下りた。

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謝辞ミチオ・自己研鑽資料

2014/9/1、2016/2/18 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 通称：「オリジナル教会」　「ささくら修道会」 2017/2/21