（１９）巨像(きょぞう)の設置場所

19-1西暦１５０４年（ミケランジェロ３０歳）、19-2巨像は完成した。19-3その印象（いんしょう）は圧倒的であった。19-4伝統的に少年の姿で表わされるのが常だったダビデが、19-5ここでは若々しく筋骨（きんこつ）隆々（りゅうりゅう）の全裸（ぜんら）の若者になっていたが、19-6作者の古典彫刻研究の成果が惜しみなく発揮され、19-7かつその斬新な若さの表現によって、19-8古典彫刻をも凌駕（りょうが）するものと思われた。19-9若さの持つ美と力と勇気だけでなく、19-10そこに分（わ）かち難（がた）くからみつく頼りなさ、19-11不均衡（ふきんこう）、19-12無分別（むふんべつ）の要素もまた、19-13完璧な調和の中に表現された。 19-14この作品は、19-15ルネサンスの新段階、19-16いわゆる「盛期ルネサンス」彫刻の号砲となった。19-17「疑いなくこの像のおかげで、19-18古代と現代、19-19ギリシャとローマのすべての彫刻は影が薄くなった」と感じたのは、19-20バザーリだけではなかった。19-21政府はこの見事な像の設置場所を決めるために専門委員会を招集した。19-22ボッティチェリ、フィリッピーノ・リッピ、ペルジーノら、19-23フィレンツェ在住の名匠（めいしょう）が呼び集められ、19-24チェザレの陣営に居つくことができなくて帰国していたレオナルドも参加を求められた。 19-25会議の体勢（たいせい）は政庁舎横のロッジアに収める案に傾いたが、19-26作者の意向を求められたミケランジェロは、19-27自分のこの作品は屋外に置かれることこそ望ましいと、19-28憤然と主張した。19-29それは政府の意向と一致していたから、19-30作者の意図は尊重された。19-31ダビデの巨像は政庁舎の前に南向きに置かれることとなった。19-32南から攻め登るであろうメディチ家から、19-33自由の政府を敢然（かんぜん）として防衛する若きダビデ。19-34作者がその意味を知らずに屋外に置けと主張したはずはない。 (19-35)５月１４日、19-36巨大な石像は制作場所から政庁前広場へと移動された。19-37深夜（しんや）であったにもかかわらず、19-38この像に対して敵意を抱いた投石が繰り返された、19-39と記録は伝えている。19-40メディチ家の厚い恩顧（おんこ）を受けた身で、19-41このような反メディチの象徴（しょうちょう）像を誇示（こじ）しようとする作者に対する反発（はんぱつ）か、19-42それとも亡き修道院長の教えに共鳴（きょうめい）しその説教に日参（にっさん）しながら、19-43師を処刑した権力に厚顔（こうがん）に同調して、19-44その教えに真っ向（まっこう）から逆（さか）らう全裸の巨像を彫（ほ）った彫刻家に対する憎しみか。 19-45いずれにしてもミケランジェロは、19-46この作品によって自治都市民主制への忠誠を示し、19-47それによってメディチ党からもサボナローラ派からも反発を買った。19-48だがそれは、、彼が意識したかどうかは別にして、19-49彼の心の裂け目を埋める一つの解決であったのだ。19-50そしてその結果生じる反発は、19-51作者の力量と作品の魅力が圧伏（あっぷく）した。19-52その夜以後、投石が行われたという記録はない。

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謝辞ミチオ・自己研鑽資料

2016/1/30 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 通称：「オリジナル教会」　「ささくら修道会」 2017/2/19