（１４）体制 （１４）体制
| 14-1この時のフランス軍総勢約五万、14-2フィレンツェ領に入るやピサを目指し、14-3この服属市から軍資金を巻き上げて、14-4その代償にフィレンツェからの独立を約束した。14-5貿易立国のフィレンツェにとってアルノ河口（かこう）の港ピサは生命線ともいうべく、14-6これを奪われることは経済の破局を意味する。14-7そういうたいへんなことを軽い気持でやってのけたフランス王は、14-8歩武堂々（ほぶ・どうどう）とフィレンツェに迫る。 14-9市民は戦慄（せんりつ）した。14-10数十年の平和に馴染（なじ）み、14-11百人単位の傭兵隊（ようへい・たい）しか見たことのないイタリヤ人にとっては、14-12五万という数だけで充分の驚きである。14-13しかも、ならず者を寄せ集めたような無規律な傭兵軍団と違って、14-14こちらは揃（そろ）いのユニホームを着たれっきとした正規国軍（せいき・こくぐん）だ。14-15その上、兵器の質量（しつ・りょう）も桁違（けたちが）いである。14-16何基も何基も大砲が、車輪をつけてがらがらと曳行（えいこう）されるのを見て、14-17イタリヤ人は目を丸くした。14-18イタリヤでは大砲はもっとお粗末で数も少なく、14-19固定式で、14-20移動にはいちいち解体して車に積んで運ばねばならなかったのである。 14-21いくら金は持っていても、14-22自治都市の狭い枠を抜けられない群雄（ぐんゆう）割拠（かっきょ）のイタリヤ諸国は、14-23少なくとも軍事力では、14-24フランス、スペイン、イギリスなどの新興（しんこう）民族（みんぞく）統一国家に対抗すべくもなかった。14-25それをよく知っていたからこそ、14-26ロレンツオは細心に平和維持に努め、14-27これら民族諸国家に侵入のきっかけを与えぬようにしていたのである。 14-28フランス王の陣営まで交渉に赴（おもむ）いたメディチ家の若旦那（わかだんな）は、14-29フランス軍の威容（いよう）を見せつけられて腰を抜かしそうになり、14-30ほとんど無条件降伏に近い条件で和議を成立させた。14-31仏軍（フランス）進駐受け入れと宿舎の提供、14-32共和国全（ぜん）要塞（ようさい）の引き渡し、4-33償金（しょうきん：損害の賠償として支払う金銭）二十万フィオリーニ（２０億円）の支払い、14-34ピサ独立の承認、14-35その上、フィレンツェ共和国は以後フランス王に忠誠を誓い、14-36その保護のもとに置かれること。 14-37・・・・だが、ピエロがやむなしと思ったにしても、14-38自由のイデオロギーを生き甲斐（いきがい）とするフィレンツェ市民は、14-39まだ仏軍の陣容を目（ま）の当たりにしていなかったから、14-40そんな条件を承知できるはずがない。14-41たちまち激昂（げっこう）、14-42武器をとって決起（けっき）し、14-43総務会に圧力をかけてメディチ家追放を決議させ、14-44サボナローラ他二名を市民代表に選んで、14-45対仏交渉を委任。14-46修道院長はこうして共和国の政権を握った。 14-47交渉から帰ってきたピエロは政庁に入ろうとして阻止（そし）され、14-48自邸に戻ろうとしてもその前には武装市民の一隊が歯をむいて待ちかまえている。14-49とってかえして貧民街へ行き、14-50メディチ家の伝統に従って下層民に支持を訴えたが、14-51それまでの貴族的で横暴な言動が災いして、14-52冷たくあしらわれた。14-53万策（ばんさく）尽（つ）きたピエロは、二人の弟とともに亡命の道を選ぶ。14-54こうしてメディチ一党独裁体制はあえなく崩壊。 14-55半島諸国は目（め）まぐるしい変転の波に呑（の）み込まれた。14-56フランス王は予定通りナポリ王国を征服したが、14-57十字軍と騎士道の甘い夢に酔っている間に教皇主導の反仏神聖同盟成立、14-58ミラノも含めてイタリヤ全土がフランスに敵対して結集。14-59愕然（がくぜん）としたシャルル八世は軍をまとめて北上、14-60立ちふさがるイタリヤ連合軍を蹴散（けち）らして撤退（てったい）、14-61帰国後まもなく病を得て失意のうちに没。14-62遠征は失敗したが、14-63アルプスの北の絶対君主たちはイタリヤの軍事的無力を知った。14-64彼らの目には、豊かな生活と最高の文化を誇るこの半島が、14-65征服者を待つ妖艶（ようえん）な美女のように見えてきた。 |
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| 謝辞ミチオ・自己研鑽資料 |
| 2016/1/24 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表 笹倉正義 通称：「オリジナル教会」 「ささくら修道会」 2017/2/19 |