（１８）コジモの用心(ようじん)

アルビッツイの油断 1-6-18-1死刑（しけい）にはできなかったけれども、アルビッツイと実権派（じっけん）（は）は勝利（しょうり）を信（しん）じた。1-6-18-2先手（せんて）を打（う）って政府（せいふ）の危機（きき）を救（すく）い、自分（じぶん）たちの権力基盤（けんりょく）（きばん）を再（ふたた）び安泰（あんたい）にしたと信（しん）じた。 1-6-18-3中心人物（ちゅうしん）（じんぶつ）三名（さんめい）を追放（ついほう）したのだから、メディチ派（は）の組織（そしき）も壊滅（かいめつ）しようし、巨額（きょがく）の保証金（ほしょうきん）を出（だ）させたのだから、メディチ財閥（ざいばつ）の金庫（きんこ）もかなり痛手（いたで）を受（う）けたろう。 したたかなコジモの用心 1-6-18-4ところが、メディチ党（とう）の結束（けっそく）は彼（かれ）らの予想（よそう）よりずっと固（かた）く、メディチ系企業（けい）（きぎょう）の国際性（こくさいせい）は彼（かれ）らの判断（はんだん）よりずっと強（つよ）かったのだ。 1-6-18-5コジモの回想（かいそう）の中（なか）で「私（わたし）が受（う）けていた報告（ほうこく）について聞（き）きただした」とあるのは、彼（かれ）が事前（じぜん）に暴圧（ぼうあつ）の情報（じょうほう）を得（え）ていたことを示（しめ）している。 1-6-18-6逮捕監禁（たいほ）（かんきん）も、反逆罪（はんぎゃくざい）での告発（こくはつ）も、死刑（しけい）にはできないことも、正義（せいぎ）の旗手（きしゅ）が金（かね）で転（ころ）びやすいことも、保証金（ほしょうきん）を取（と）られることも、すべてコジモの読（よ）み筋（すじ）だったのである。1-6-18-7事実（じじつ）、対（たい）ルッカ戦争（せんそう）が終（おわ）った頃（ころ）から、このことあるを期（き）して、彼（かれ）はメディチ系企業（けい）（きぎょう）の資産（しさん）を急速（きゅうそく）に分散（ぶんさん）している。 用心（１）財産隠し 1-6-18-8ベネチヤやローマの支店（してん）、それに教会（きょうかい）や修道院（しゅうどういん）に動産（どうさん）の多（おお）くを移（うつ）し、預金（よきん）や債権（さいけん）や所有地（しょゆうち）を他人（たにん）名義（めいぎ）に変（か）え、その上（うえ）帳簿類（ちょうぼ）（るい）や家計（かけい）の費用（ひよう）は先祖伝来（せんぞ）（でんらい）の聖遺物（せいいぶつ）と一緒（いっしょ）にして保管（ほかん）してあるので、警察（けいさつ）は教皇（きょうこう）の許可（きょか）がなければ手（て）が出（だ）せない。 1-6-18-9教皇（きょうこう）エウゲニウス四世（よんせい）はベネチア人（じん）で、メディチの「友人（ゆうじん）」の一人（ひとり）である。1-6-18-10保証金（ほしょうきん）二万（にまん：＝二億円）の大半（たいはん）はメディチ党（とう）が組織（そしき）を挙（あ）げてのカンパ活動（かつどう）で賄（まかな）い、メディチ銀行（ぎんこう）はほとんど出血（しゅっけつ）しないで済（す）んだ。 用心（２）フィレンツェの牢獄 1-6-18-11監禁中（かんきん）（ちゅう）に彼（かれ）が真剣（しんけん）に恐（おそ）れたのは、毒殺（どくさつ）だけだった。1-6-18-12最初（さいしょ）は家（いえ）から食物（たべもの）を運（はこ）ばせ、獄中（ごくちゅう）の料理（りょうり）に手（て）をつけなかったが、それが見（み）つかって自家（じか）との連絡（れんらく）を遮断（しゃだん）されると、料理人（りょうりにん）を手（て）なずけて料理人（りょうりにん）の食（た）べる分（ぶん）を半分（はんぶん）分（わ）けてもらうことにした。1-6-18-13普段（ふだん）から粗食（そしょく）だったから、あまり苦（く）にはならなかったはずである。 コジモがベネチヤで歓待 1-6-18-14十月初旬（じゅうがつ）（しょじゅん）、コジモは追放先（ついほうさき）へと旅立（たびだ）つ。1-6-18-15ベネチア政府（せいふ）はこの亡命者（ぼうめいしゃ）を、国賓（こくひん）なみに歓待（かんたい）した。

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ミチオ書・第一部・（文章）歴史物語・藤沢道郎 ページ製作者：ささくら修道会　笹倉正義

2014/9/1、2016/1/16、2017/2/19 2019/2/8 （ささくら宗）聖母マリヤ福音教会：通称：「オリジナル教会」