（１４） （１４）
| 回想ナポリ王 14-1あの時、14-2ロレンツオの単独行動を知った14-3メディチ党の幹部たちは、14-4絶望に陥っていた。14-5メディチ家の若殿（わかとの：甘ちゃんな二代目）の考えは甘い。14-6相手は意気に感ずるような玉じゃない。14-7老獪（ろうかい）な狐（きつね）であって、14-8窮鳥（きゅうちょう）懐（ふところ）に入れば14-9これを殺さぬ猟師（りょうし）ではない。14-10自己（じこ）の利を計り14-11害を除くためには、14-12信義（しんぎ）や14-13道義（どうぎ）は無視してはばからない男だ。 14-14今（いま）敵の大将が窮（きゅう）して懐中（かいちゅう）に飛び込んできたのであれば14-15これ幸い、14-16殺してしまってもよいし、14-17教皇庁に引き渡してもよい。14-18それで戦争に決着が付き、14-19戦費もこれ以上かさまないし、14-20メディチ党抜きのフィレンツェは14-21ナポリと教皇の思いどおりになる、14-22そう考えるに違いない。14-23事前（じぜん）に相談してくれたら、14-24どんなことをしてでも、14-25そんな愚かな冒険は止めさせたのに。 14-26だがロレンツオは、14-27ナポリ王説得に成功したのである。14-28相手が利害でものを考える人間ならば、14-29こちらも利害に基づいて説けばよい。14-30教皇国家をこれ以上強大にすれば、14-31困るのは直接（ちょくせつ）境（さかい）を接するナポリ王国ではないか。14-32その王国の背後（はいご）から14-33イスラム・トルコ軍が攻め寄せようと狙っているときに、14-34フィレンツェ、14-35ベネチヤ、14-36ミラノを敵に回して何の得があろう。 14-37東方ローマ帝国を滅ぼして14-38意気（いき）揚（あ）がるトルコ軍に、14-39ナポリだけで対抗できると思っているのか。14-40ここは教皇抜きで、14-41私とあなたの間で手を打とうではないか。14-42この説得は成功した。14-43たぶん、14-44財政難（ざいせいなん）のナポリ宮廷には、14-45メディチ銀行の融資（ゆうし）も魅力だったにちがいない。14-46こうしてナポリ＝フィレンツェ間の単独講和が成立した。 14-47フィレンツェに帰ってきたロレンツオは、14-48驚喜（きょうき）する市民に14-49凱旋（がいせん）将軍のように迎えられた。14-50暴力によってでなく、14-51知恵と14-52弁舌（べんぜつ）によって相手を従わせたのだから、14-53これほどフィレンツェ気質に合った勝利はない。14-54ボッテイチェルリは名作14-55「ケンタウロスを鎮めるパラス女神」を描いて、14-56ロレンツオの勝利を讃（たた）えた。14-57ケンタウロスは暴力の、14-58パラス女神は理性の象徴である。14-59前者がナポリ王、14-60後者（こうしゃ）がロレンツオを寓意（ぐうい）していることは明らかだ。 14-61これ以後ロレンツオに対する市民の尊敬は変わらず、14-62メディチ支配は不動の安定を得た。14-63ペストが襲来し、14-64不況（ふきょう）の波が押し寄せても、14-65メディチ家に反対する動きは起こらなかった。 14-66ローマ教皇シクストウス四世も、14-67フィレンツェ討伐の14-68主力が降りてしまったのでは、14-69講和を認める以外に術（すべ）はない。14-70ロレンツオは14-71ここで慎重（しんちょう）さを発揮する。14-72弟を殺した連中の後ろ盾である教皇に対して14-73使節を送り、14-74詫（わ）びを入れた形にして14-75教皇の顔を立てた。14-76その上、14-77この教皇がバチカン宮内に建てた14-78礼拝堂の装飾に協力し、14-79ボッテイチェリ、14-80ギルランダイオ、14-81ピエロ・ディ・コジモら、14-82そうそうたるフィレンツェ画壇の巨匠（きょしょう）たちを動員して14-83ローマに送り込み、14-84壁画を描かせた。 14-85これが現在世界で最も有名な礼拝堂、14-86システィーナ礼拝堂の14-87最初の装飾である。14-88一方彼は、14-89次男（じなん）ジョバンニを14-90幼いうちから聖職の道に進ませ、14-91ローマと14-92フィレンツェの絆（きずな）を強めようとした。14-93このジョバンニが後に教皇座に就（つ）き、14-94レオ十世となる。 |
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| 謝辞ミチオ・自己研鑽資料 |
| 2016/4/29 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表 笹倉正義 通称：「オリジナル教会」 「ささくら修道会」 2017/3/3 |