（１５）ドナーティの （１５）ドナーティの
| 教皇の 15-1ボニファティウスの作戦は15-2巧妙（こうみょう）であった。15-3まずフィレンツェの内紛（ないふん）を15-4煽（あお）り立て、15-5手の着けられない15-6暴力（ぼうりょく）闘争（とうそう）に転化（てんか）させる。15-7そしてそれを15-8調停（ちょうてい）するという名目（めいもく）で、15-9教皇使節（しせつ）を派遣する。 15-10この使節には15-11フランス王の弟に当たる15-12シャルル・ド・バロアを起用（きよう）し、15-13フランス軍を率いて15-14市内（しない）に入らせ、15-15その武力で全市（ぜんし）を制圧（せいあつ）する。15-16その上で政府を打倒（だとう）し、15-17今は教皇の傀儡（かいらい）となった15-18ドナーティの黒派に15-19権力を握らせる、15-20というのだ。 15-21教皇ボニファティウスの作戦は15-22図（ず）に当たった。15-23フィレンツェの15-24白黒（しろくろ）両派（りょうは）の争いは15-25手の着けられない暴力沙汰（さた）に発展し、15-26流血（りゅうけつ）の惨事（さんじ）が15-27繰り返されたから、15-28市民はうんざりして、15-29教皇が和平（わへい）の使節を差し向けたと聞くと、15-30熱烈に歓迎した。 15-31教皇特使（とくし）シャルル・ド・バロアは15-32護衛（ごえい）のフランス軍を率いて、15-33西暦１３０１年の晩秋（ばんしゅう）、15-34抵抗（ていこう）を受けることなく15-35フィレンツェ市内に入り、15-36露骨（ろこつ）に黒派の肩（かた）を持ったから、15-37黒派のクーデター計画は難（なん）なく成功（せいこう）、15-38コルソ・ドナーティが政権を握（にぎ）る。15-39フランス軍制圧（せいあつ）下（か）に15-40白派は為（な）す術（すべ）がなかった。 15-41たちまち報復（ほうふく）と15-42粛清（しゅくせい）の嵐（あらし）が吹きすさび、15-43白派の幹部（かんぶ）は15-44次々に法廷に引き出され、15-45処刑（しょけい）された。15-46最初に死刑（しけい）を宣告（せんこく）された15-47九人の中に、15-48ダンテ・アリギエーリの名もあった。 15-49彼はかろうじて15-50国外に脱出、15-51処刑（しょけい）を免（まぬか）れたが、15-52彼の住居は15-53完全に破壊（はかい）され、15-54更地（さらち）に戻されてしまった。15-55もはや帰るべき家もなく、15-56フィレンツェで15-57彼を待っているのは15-58死刑台のみ。15-59こうして詩人の流浪が始まった。 ---この部分は、歴史物語としてミチオ・オリジナルと確信する。ダンテは、黒派の指導者コルソ・ドナーティの縁者ジェンマ・ドナーティと結婚した。しかし、ダンテは自尊心が強く、才能を鼻にかけた。妻が黒派なのに白派に属したのは、まさにその姑息な自尊心のためだ。フィレンツェにおけるダンテの存在記録の抹消、それは一体どのような憎悪によるものなのだろうか。コルソは、ダンテとドナーティ一族との関係を更地にしたかったのかもしれない。 印刷機の発明者グーテンベルクもまた、存在履歴の完全消去、という目に遭っている。それは、彼に金を貸した男がグーテンベルクの業績の私物化を図ったためだ。しかし、歴史はむしろ、加害者一族の名を葬り、「印刷機発明者」の冠をグーテンベルクの頭上に載せたのだった。 ダンテとグーテンベルクが違うのは、ダンテは自分の才におぼれたことにある。彼の作品「新生」を読めば、ベアトリーチェを作品のだしに使っているだけだと分かる。詩人としてならば、彼はフィレンツェ市民であり続けただろう。その代わり、「神曲」は生まれなかった。神曲は、常に暗殺者の影におびえた中での、精神的に抗し難い圧力によって、彼の天賦の才がつむぎだしたものだ。 |
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| 謝辞ミチオ・自己研鑽資料 |
| 2016/4/28 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表 笹倉正義 通称：「オリジナル教会」 「ささくら修道会」 2017/3/2 |