（９） （９）
| 9-1新教皇ステファヌス七世は、9-2前教皇フォルモススの罪状（ざいじょう）を数（かぞ）え上げ、9-3その裁判（さいばん）を行うと公布（こうふ）した。9-4裁判と言ったって、9-5被告（ひこく）はもう死亡（しぼう）している。9-6そこで、墓（はか）をあばき、9-7腐乱（ふらん）した死骸に9-8教皇衣（い）を着せて、9-9法廷（ほうてい）に引き出すこととなった。9-10西暦８９７年２月、9-11椅子（いす）に固定（こてい）された9-12前教皇の死骸に向かって、9-13現教皇ステファヌスが9-14審理（しんり）の開始（かいし）を宣言（せんげん）、9-15「悪心（あくしん）に満ちたフォルモススよ、9-16何故（なぜ）お前は教皇座を簒奪（さんだつ）したのか」と問いかける。 9-17弁護士（べんごし）役（やく）を仰（おお）せつかって9-18死骸の横に立つ老（ろう）助祭（じょさい）が、9-19それにおずおずと抗弁（こうべん）し始めると、9-20法廷内に詰（つ）めかけた9-21スポレート派の法律家たちが9-22一斉（いっせい）に騒（さわ）ぎ立て、9-23罵倒（ばとう）を浴（あ）びせる。9-24フォルモススは予定（よてい）通り有罪（ゆうざい）とされ、9-25廃位（はいい）を宣言され、9-26前教皇の行った教皇庁の人事は9-27すべて白紙（はくし）に戻された。9-28こうして審理が終ると、9-29死骸は教皇衣を剥（は）がされ、9-30かつて教皇として祝福（しゅくふく）を与えた9-31右手の指（ゆび）三本（さんぼん）を切り落とされ、9-32首と胴を切り離されて、9-33そのままテベレ川に捨（す）てられた。 9-34こんな裁判はどこから見てもあまりにも無茶（むちゃ）だから、9-35世人（せじん）が納得するはずはなかった。9-36教皇ステファヌスはまもなく暗殺され、9-37三代（さんだい）後（ご）の教皇は9-38この死体裁判を無効（むこう）にした。9-39だが、それでこの問題が解決したわけではなかった。9-40この事件（じけん）は、9-41九世紀（きゅうせいき）末（まつ）のカトリック教皇庁の9-42腐敗（ふはい）堕落（だらく）を示す、9-43一つのエピソードに過ぎなかったからである。 9-44教皇や司教は9-45世俗（せぞく）君主（くんしゅ）と変わらぬ生活を送り、9-46大邸宅（だいていたく）に住み、9-47たらふく食べかつ飲み、9-48狩猟（しゅりょう）を楽しみ、9-49半（なか）ば公然（こうぜん）と愛人（あいじん）を囲（かこ）っていた。9-50周辺（しゅうへん）の地方（ちほう）ボスたちの、9-51この世俗権力を利用して9-52利権をほしいままにしようとする策動（さくどう）は止（や）むことなく、9-53教皇庁はその策動にいつも巻き込まれる。9-54マローチヤが生まれたのは、この腐敗に満ちた状況のただ中にあった。 |
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| 謝辞ミチオ・自己研鑽資料 |
| 2014/9/1、2016/4/8 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表 笹倉正義 通称：「オリジナル教会」 「ささくら修道会」 2017/2/28 |