（１０）愛人(あいじん)マローチヤ

10-1父はスポレート派の貴族テオフィラット伯、10-2マローチヤが物心（ものごころ）ついた頃には、10-3父はローマ貴族の代表者として、10-4教皇庁に君臨（くんりん）していた。10-5母テオドラもなかなかのやり手で、10-6この夫婦（ふうふ）は協力して10-7教会の世俗権力を私物化（しぶつか）し、10-8都合（つごう）のよい人物（じんぶつ）を教皇に擁立（ようりつ）し、10-9自分たちの思うままに操（あやつ）った。 10-10彼らの擁立した教皇セルギウス三世は、10-11あの死骸裁判を再び有効（ゆうこう）とし、10-12フォルモススの名誉（めいよ）回復（かいふく）に賛成した聖職者や10-13貴族を絞首刑（こうしゅけい）にしたが、10-14その陰（かげ）には愛人（あいじん）の指嗾（しそう：使嗾とも書く：指図してそそのかすこと）があると、10-15もっぱら噂（うわさ）された。 10-16その愛人とは、10-17美しく成長したテオフィラット伯の娘、10-18マローチヤである。10-19両親は10-20ローマで最高の美女と評される10-21我（わ）が娘を教皇の愛人とし、10-22権力の道具としたが、10-23娘のほうもそんな生活にすぐ適応したようだ。10-24マローチヤは10-25まもなく妊娠（にんしん）したが、10-26その子の父がセルギウス教皇であることは、10-27公然（こうぜん）の秘密であった。 10-28その教皇が亡（な）くなると、10-29中継（なかつ）ぎの教皇二人を置いて、10-30ヨハネス十世が就位するが、10-31これはマローチヤの母10-32テオドラの愛人であった。10-33その教皇ヨハネスの肝（きも）いりで、10-34マローチヤは最初の夫（おっと）を迎える。10-35スポレート公アルベリコ、10-36本土（ほんど）に侵攻してきたイスラム軍を破り、10-37撃退した勇将（ゆうしょう）である。 10-38この頃のマローチヤは10-39すでにテオフィラット家（け）の中心（ちゅうしん）人物（じんぶつ）で、10-40その美貌（びぼう）を利（り）して10-41教会の要人（ようじん）たちを巧（たく）みに操（あやつ）り、10-42その権勢は両親をしのぐものがあったから、10-43夫婦仲が好（よ）かったのかどうかはわからないが、10-44二人の間に男児（だんじ）が生まれてまもなく10-45アルベリコ公は病死（びょうし）。10-46二年足らずの10-47短い夫婦生活であった。 10-48マローチヤは若くして寡婦（かふ）となったが、10-49これだけの美人を周（まわ）りが放（ほう）っておくはずがなく、10-50彼女自身も亡き夫を偲（しの）んで修道院に入ろうか、10-51などと思う玉（たま）ではない。10-52手に入れた権力を維持（いじ）し10-53強化（きょうか）するために、10-54自分の美しさと魅力（みりょく）を10-55最大限に利用するつもりだ。10-56そこで目を付けたのが、10-57トスカーナ公グイード、10-58この結婚で教皇庁内の二大勢力、10-59スポレート派と10-60トスカーナ派を合体（がったい）させ、10-61自己（じこ）のローマでの権力を10-62磐石（ばんじゃく）のものとするつもりである。10-63だが、これに待ったをかけたのが教皇ヨハネス十一世だった。

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謝辞ミチオ・自己研鑽資料

2014/9/1、2016/4/8 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 通称：「オリジナル教会」　「ささくら修道会」 2017/2/28