（１２）逃げるが勝ち

12-1三度目の夫と12-2聖天使城に新居（しんきょ）を構（かま）えたマローチヤ夫人（ふじん）には、12-3連（つ）れ子（こ）がいた。12-4最初の夫、12-5スポレート公12-6アルベルコの忘れ形見（かたみ）で、12-7教皇ヨハネスの異父（いふ）弟（てい）に当たり、12-8父と同じ名で呼ばれていた。12-9新しい父ウーゴ王は12-10怒りっぽく粗暴（そぼう）な男だったから、12-11最初からこの継子（ままこ）との関係はよくなかったようである。12-12当時（とうじ）の年代記（ねんだいき）は12-13二人の争いを次のように伝えている。 12-14ウーゴ王は12-15新妻（にいづま）の連れ子アルベルコを12-16自分の小姓（こしょう）のように扱い、12-17ある夕（ゆう）べ食卓（しょくたく）でワインを注（そそ）がせていたが、12-18少年が粗相（そそう）をして、12-19酒瓶（さかびん）を取り落とし、12-20割ってしまった。12-21よほど大切（たいせつ）にしていたワインだったのか、12-22ウーゴは激怒（げきど）してアルベルコを怒鳴（どな）りつけ、12-23それでもおさまらず、したたかに平手（ひらて）打（う）ちをくれたから、12-24少年は憤然（ふんぜん）と部屋（へや）を去り、12-25そのまま聖天使城の外へ走り出て、12-26テベレ川を渡り、12-27ローマの街（まち）の暗闇（くらやみ）に姿を消した。12-28この家出（いえで）に、12-29さすが乱暴なウーゴも少しは後悔（こうかい）したのか、12-30猟犬（りょうけん）の群（む）れを連（つ）れて12-31義理の息子を捜しに行かせたが、12-32その行方（ゆくえ）はわからなかった。 12-33その間（かん）にアルベルコは、12-34コロッセオの近くまで来ていた。12-35辺（あた）りにいた民衆に12-36継父（けいふ）の非道（ひどう）を訴（うった）えているうちに、12-37大勢の市民が集まってきた。12-38アルベルコは彼らに、12-39ウーゴはローマを自分の本領（ほんりょう）のプロバンスに12-40併合（へいごう）しようとしていると暴露（ばくろ）し、12-41蜂起（ほうき）を煽動（せんどう）し始めた。12-42最近教会のほどこしが少なくなっていたのでむしゃくしゃしていた市民は、12-43たちまちこれに同調、12-44やがて手に手にあり合わせの棍棒（こんぼう）を握った群衆が、12-45聖天使城に向かって行進（こうしん）を始める始末（しまつ）となった。 12-46ウーゴは12-47黒山（くろやま）のような群集が12-48テベレ川を渡り、12-49城に攻め寄せるのを見て12-50肝（きも）を潰（つぶ）した。12-51麾下（きか）の軍勢は12-52市外（しがい）に置いてあり、12-53城の守りは手薄（てうす）だった。12-54だがウーゴが新婚（しんこん）の住（す）まいを12-55聖天使城に置いたのは正解（せいかい）だった。12-56ローマにはこれ以上堅固（けんご）な要塞（ようさい）はない。12-57鉄の扉をしっかり閉（と）じてしまえば、12-58そう簡単には突破はされない。12-59そうこうするうちに郊外（ｌこうがい）の軍勢が助けに来るだろう。 12-60そう考えて、12-61奥まった部屋（へや）でマローチヤと寝ることにしたが、12-62外の騒ぎはますますひどくなり、12-63群集はいよいよ数を増しているようだった。12-64これではたとえ援軍（えんぐん）が来ても12-65救出（きゅうしゅつ）に成功する見込みは立たない。12-66落ち着けなくなったウーゴ王は、12-67聖天使城を完全に包囲される前に12-68脱出（だっしゅつ）するしか道はないと決心（けっしん）した。12-69眠っているマローチヤを置き去りにして、12-70窓から縄（なわ）を垂（た）らし、12-71それを伝（つた）って外へ出て、12-72馬に一鞭（ひとむち）、12-73郊外の部隊と合流すると、12-74そのままパビーアへと逃げ去った。

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謝辞ミチオ・自己研鑽資料

2014/9/1、2016/4/10 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 通称：「オリジナル教会」　「ささくら修道会」 2017/2/28