（５）四つ目の難題(なんだい)

5-1第四、5-2これが最も難しい問題だが、5-3頼りにすべき国家（こっか）機構（きこう）が存在しない。5-4ランゴバルドと戦うとすれば、5-5宗教団体である教会が5-6武装しなければならぬ。5-7和を結ぶとしても、5-8教会が外交（がいこう）の駆（か）け引きをしなければならない。5-9さらに、ローマとその周辺（しゅうへん）の統治（とうち）をどうするか、5-10という問題がある。

5-11東ローマ皇帝はすでに、5-12その地域の統治を5-13ローマ教会に委（ゆだ）ねると布告（ふこく）し、5-14行政から手を引いていた。5-15たしかに、それ以外に方法はなかった。5-16教会は5-17この数世紀の間に多くの遺贈（いぞう）と布施（ふせ）を得て、5-18巨大な資産の持（も）ち主（ぬし）になっていたし、5-19知識や技術や情報をも5-20独占（どくせん）できる立場にあった。

5-21しかし、それでも、5-22キリスト教会は5-23あくまで宗教団体であって、5-24信徒（しんと）の信仰を指導し、5-25欲望の誘惑から信徒を守り、5-26霊魂の救済へと導くための組織でなければならない。

5-27それが世俗の権力を代行し、5-28みずから世俗（せぞく）の富を蓄（たくわ）え、5-29兵を募（つの）り、5-30税（ぜい）を集め、5-31治安（ちあん）を維持する責任を担（にな）うのであれば、5-32ローマの教会はそのまま世俗の国家でもあることになり、5-33教皇は一地域（いち・ちいき）の君主（くんしゅ）を兼（か）ねることになってしまう。5-34それは、「カエサルのものはカエサルに返せ」と言った5-35キリストの教えに、5-36明白（めいはく）に背（そむ）くことにならないだろうか。

（マタイによる福音書）（マルコによる福音書）（ルカによる福音書）
12-13さて、人々はパリサイ人やヘロデ党の者を数人、イエスのもとにつかわして、その言葉じりを捕えようとした。12-14彼らはきてイエスに言った、「先生、わたしたちはあなたが真実なかたで、だれをも、はばかられないことを知っています。あなたは人に分け隔てをなさらないで、真理に基いて神の道を教えてくださいます。ところで、カイザルに税金を納めてよいでしょうか、いけないでしょうか。納めるべきでしょうか、納めてはならないのでしょうか」。12-15イエスは彼らの偽善を見抜いて言われた、「なぜわたしをためそうとするのか。デナリを持ってきて見せなさい」。12-16彼らはそれを持ってきた。そこでイエスは言われた、「これは、だれの肖像、だれの記号か」。彼らは「カイザルのです」と答えた。12-17するとイエスは言われた、「カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」。彼らはイエスに驚嘆した。

5-37しかし、だからといってその責任を放棄（ほうき）し、5-38ひたすら霊魂（れいこん）救済（きゅうさい）のために5-39祈ることに徹（てっ）すれば、5-40ローマはたちまち異端（いたん）アリウス派の「蛮族（ばんぞく）」に蹂躙（じゅうりん）され、5-41全（ぜん）信徒はそのよりどころを失うこととなるだろう。5-42ランゴバルド族の進撃を前にして、5-43この四つの問題はもはや先送りを許されない。5-44新しい教皇は就任（しゅうにん）すればすぐに決断し、5-45対策（たいさく）を講じなければならない。

5-46そしてその決断（けつだん）が遅れれば、5-47あるいはその対策を間違えば・・・・5-48その時は西方（せいほう：東ローマ教会に対して）の正統派（せいとう・は）教会の全面的（ぜんめんてき）破局（はきょく）である。5-49しかもその四つの問題のどれ一つとして、5-50確実な解決の見通しの立つものはない。5-51教皇就位をためらうのは当然であった。5-52だが運命はグレゴリオを教皇座に押し上げ、5-53彼はそれを神の意志として受け止めたのである。

5-54だがそのグレゴリオとは5-55どういう人だったのか。5-56その生（お）い立（た）ちから、5-57語（かた）り始めよう。
 
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謝辞ミチオ・自己研鑽資料
2014/9/1、2016/3/30 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義
通称：「オリジナル教会」　「ささくら修道会」
2017/2/26