（５）プロフィール

5-1プブリウス・アエリウス・ハドリアヌス、5-2紀元７６年スペインに生まれる。5-3先帝トラヤヌスは同郷（どうきょう）、5-4父が皇帝の従兄弟（いとこ）に当たるので、5-5ハドリアヌスの出世（しゅっせ）は順調だった。5-6若くして要職（ようしょく）に抜擢（ばってき）され、5-7数次（すうじ）の戦役（せんえき）にも将軍として従事（じゅうじ）、5-8数々の功績を挙げた。

5-9現在ルーブル美術館にある胸像（きょうぞう）を見ると、5-10額（ひたい）広く眼光（がんこう）鋭（するど）く口元（くちもと）引き締まり、5-11がっちりした体格、5-12高貴（こうき）な知性（ちせい）に溢（あふ）れながら柔弱（にゅうじゃく）なところのない、5-13堂々たる好男子である。5-14ギリシア彫刻と違って、5-15ローマの彫刻はリアリズムだから、5-16皇帝像だからといって美化（びか）したりはしない。

5-17順風満帆（じゅんぷう・まんぱん）の経歴に加えて5-18眉目秀麗（びもく・しゅうれい）と来れば、5-19暗い青年時代であったはずがない。5-20陽気（ようき）で快活で、5-21友人（ゆうじん）も愛人も数多かったようである。5-22恋を楽しみ、5-23美食（びしょく）を好んだが、5-24強力な知性と意志は、5-25欲望に溺（おぼ）れることを許さなかった。

5-26皇帝トラヤヌスはこの青年を愛し、5-27姪（めい）のサビーナとめあわせ、5-28帝位継承者としての資格を与えた。5-29サビーナは清楚（せいそ）な美女だったが、5-30どういうわけか彼はこの妻を愛することができなかったようで、5-31夫婦（ふうふ）仲は冷たく、5-32子供も産まれなかった。

5-33しかし、当時のローマの、5-34フリー・セックスに近い性風俗（せい・ふうぞく）の中で、5-35ハドリアヌスがそれで陰鬱（いんうつ）になることはなかった。5-36結婚後も、5-37妻以外の美女や美少年との関係を続けていたし、5-38二世紀のローマでは、5-39それは決して醜聞（しゅうぶん）ではなかったのである。5-40だが、その相手が皇妃（こうひ）プロティーナだということになれば、5-41事情（じじょう）は少々変わってくる。5-42大恩（だいおん）ある先輩の妻であり、5-43しかも義理の間とはいえ5-44プロティーナはハドリアヌスの伯母（おば）に当たる。

5-45うまく振る舞って決して尻尾（しっぽ）はつかませなかったものの、5-46人の口に戸は立てられず、5-47二人の関係はスキャンダルめいた噂（うわさ）となって流れ始めた。5-48理性（りせい）の人のはずが、5-49ついに恋に溺れて破滅の危険を冒（おか）すのか。5-50いいや、この冒険の背後にはある冷徹な計算が働いていたのだ。
 
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謝辞ミチオ・自己研鑽資料
2014/9/1、2016/3/23 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義
通称：「オリジナル教会」　「ささくら修道会」
2017/2/25