（４）ナポレオンの遺産(いさん)

4-1こうして覇王（はおう）の前に敵なしと見えたのだが、4-2この絶頂期にすでにナポレオンの運命には影がさしていた。4-3教皇を圧伏（あっぷく）しようとして強烈な抵抗を受け、4-4強引（ごういん）な手段に訴えて全世界のカトリック教徒の反発と怨恨（えんこん）を買ったのが第一の失敗、4-5スペイン人民の反乱に手を焼いて思わぬ兵力の損害を招いたのが第二の失敗、4-6英国に対する経済制裁として大陸閉鎖という愚挙を演じ、4-7かえって大陸側に経済危機を招いたのが第三の失敗である。

4-8この後、大軍を率いてのロシヤ遠征が致命的大敗となり、4-9一路破局の淵へと転落していく経緯は、4-10あまりにも周知のことで、4-11ここに繰り返す必要はあるまい。4-12配所エルバ島からいったんは再起するものの、4-13ワーテルローの決戦に敗れて野望は最終的に挫折（ざせつ）、4-14絶海の孤島セントヘレナへ送られる。4-15イタリヤではなおナポリ王ミュラが、4-16独自の行動を企てて権力を保とうとしたが空（むな）しく、4-17復辟（ふくへき：退位した君主が再び位に就くこと）したブルボン王家の軍に逮捕銃殺され、4-18半島のナポレオン体制は完全に崩壊した。

4-19この崩壊過程の中でイタリヤ人の払った犠牲は決して小さいものではなかった。4-20スペイン戦役（せんえき）には三万のイタリヤ兵が動員されて二万人が戦死し、4-21ロシヤ遠征では4-22二万五千のイタリヤ将兵が荒野に屍（かばね）を晒（さら）した。4-23詩人レオパルディはこの犠牲を悼（いた）んでこう吟じた。

4-24祖国の岸辺を遠く離れ、
　　　Oh, misero solui che in guerra e spento

4-25戦（いくさ）に死にし君あはれ・・・。
　　　Non per li patri kidi ・・・

4-26しかし、ナポレオンの侵略は、4-27決してイタリヤにとってマイナスばかりあったのではない。4-28彼の意図（いと）はイタリヤ解放でなかったとしても、4-29彼の行動はこの国を隷属状態から解放するための刺激を与え、4-30その土台を造ったのである。4-31一口（ひとくち）でいえば、それは政治・経済・文化の全分野（ぜん・ぶんや）での「近代化」の契機（けいき）となった。
 
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謝辞ミチオ・自己研鑽資料
2014/9/1、2016/3/10 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義
通称：「オリジナル教会」　「ささくら修道会」
2017/2/23