（１６） （１６）
| 16-1同じ頃、16-2青年イタリヤ同盟の首領（しゅりょう）マッツイーニも、16-3同様の暗い日々を送っていた。16-4亡命先から彼が指示する革命的蜂起（ほうき）の企ては、16-5どれもこれも無惨（むざん）な失敗（しっぱい）に終った。16-6西暦１８３３年春のピエモンテでの反乱計画は事前に露見（ろけん）、16-7六十七名の同盟員が逮捕され、16-8彼が最も信頼していた同志ヤコポ・ルッフィーニは獄中で自殺、16-9十二名が銃殺刑に処せられ、16-10マッツイーニ自身も欠席裁判で死刑を宣告された。 16-11事件の全貌（ぜんぼう）を掴（つか）んだメッテルニヒは、16-12この青年イタリヤ同盟が半島の旧体制にとって最も危険な運動であり、16-13マッツイーニこそが炭焼党よりもさらに恐るべき危険人物であることをすぐに理解した。16-14彼はイタリヤでの治安（ちあん）取締りを厳重にさせると同時に、16-15マッツイーニの亡命先の政府に外交的圧力をかけて、16-16滞在許可を取り消させた。16-17おかげで危険な革命家マッツイーニの名は全欧（ぜんおう：ぜんヨーロッパ）に知られることとなったが、16-18彼自身はマルセイユからジュネーブ、16-19ジュネーブからロンドンへと、16-20亡命の旅を続け、16-21愛人ジュディッタとも別れねばならなかった。 16-22それでもイタリヤ各地に同盟支部が生まれ、16-23加盟者の総数は六万を越えたといわれる。16-24その一人にニース生れの若い船員ジュゼッペ・ガルバルディがいて、16-25ジェノバでサルデーニャ王国海軍に潜入、16-26工作に当たっていた。16-27西暦１８３４年２月、16-28ここにも同盟の蜂起（ほうき）指令がきた。16-29敏捷（びんしょう）で勇敢で冒険好きなこの青年は、16-30もちろん指定された時間に指定された場所へもう一人の同志と出かけていった。16-31だがそこには誰もおらず、16-32不逞（ふてい）の輩（やから）の暴動（ぼうどう）は未然（みぜん）に鎮圧されたという、16-33当局（とうきょく）の布告文（ふこくぶん）が壁に貼り出されているだけだった。 16-34またしても計画が事前に洩れていたのだ。16-35さすがのガリバルディも周章狼狽（しゅうしょう・ろうばい：思いがけないことに出あってうろたえ騒ぐこと）、16-36同志ともはぐれ、16-37帰隊（きたい）を諦（あきら）めて逃亡の道を選んだが、16-38欠席裁判で死刑を宣告され、16-39いくら逃げても追っ手は迫（せま）り、16-40ついにマルセイユからアメリカへと向かう。16-41マッツイーニの計画は同時多発ゲリラだったらしく、16-42その翌月にはスイスで集めた義勇軍をピエモンテへ送り込んだが、16-43王国憲兵（けんぺい）に簡単に蹴散（けち）らされて、16-44無用の犠牲を出すだけに終る。 16-45要するに、若すぎた。16-46マッツイーニは16-47自分たちの運動が燎原（りょうげん）に放たれる一点（いってん）の「火花」、16-48大規模な人民蜂起を激発するための起爆剤だと信じていた。16-49イタリヤの大地は圧制への不満と独立への希望に満ち満ちている。16-50一点の火花さえ投じれば、16-51たちまち火は燃え上がる。16-52ところがイタリヤ人民は、16-53その火花が憲兵隊の靴（くつ）に踏みにじられるのをただ傍観（ぼうかん）するだけで、16-54燃え上がるどころか、16-55場合によっては火を消す手伝いまでするのだ。 16-56理想家の通弊（つうへい）で、16-57マッツイーニも「べき」と「である」の区別、16-58主観的（しゅかんてき）願望と客観的（きゃっかんてき）現実の区別が明確でなかったから、16-59性懲（しょうこ）りもなく無謀（むぼう）な蜂起（ほうき）指令を出し続けた。16-60悲惨な失敗が続き、16-61理想を信じた多くの若者が刑場に果て、16-62獄舎につながれた。16-63杜撰（ずさん）な計画を立てては16-64有為（ゆうい：才能がある）青年（せいねん）を暴挙に駆り立てる無責任な煽動家。16-65そういう非難が彼に集中するのは当然だった。16-66彼は蜂起失敗の責任を炭焼党の非協力に帰そうとしたから、16-67秘密結社派の大親方（おお・おやかた）16-68フィリッポ・ブオナルローティと大激論になり、16-69喧嘩（けんか）別れを余儀（よぎ）なくされた。16-70こうして、せっかくの青年イタリヤ同盟も、16-71戦線を分裂させるだけにしか作用しなかったのである。 16-72ロマン主義的情熱に浮かされた若者の闘争は結局（けっきょく）空（くう）を斬（き）るだけだ、16-73もっと大人（おとな）の考えで、16-74現実に即した統一・独立の運動を構築する必要がある、16-75と考える人々が増えてきた。16-76人民の蜂起が期待できないとすれば、16-77実力と権威を持ったイタリヤの君主に望みを託（たく）するしかない。16-78そうなれば当てにできるのはローマ教皇か、16-79それともサルデーニャ国王か。16-80西暦１８３０年代は、16-81こうした「穏健派」の台頭した時期である。16-82マッシモ・ダゼリオ、16-83ジョベルティ、16-84それにカブール伯カミッロ・ベンソもその中にいた。16-85青年イタリヤ同盟の運動は壊滅（かいめつ）に瀕し、16-86失望した同志は次々に去り、16-87マッツイーニは暗い日々を、16-88それでもイギリスの労働運動から学ぶことでわずかに紛（まぎ）らわしていた。 |
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| 謝辞ミチオ・自己研鑽資料 |
| 2014/9/1、2016/3/13 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表 笹倉正義 通称：「オリジナル教会」 「ささくら修道会」 2017/2/24 |