ジェイン・エア

Charlotte Bronte
Jane Eyre 

「ジェイン・エア」　シャーロット・ブロンテ作
南　亜希子　訳
株式会社ハーレクイン
２００７年

---「ジェイン・エア」は主人公の名前です。自立する女性、自分の意思によって、結婚も選択できる女性を描いています。
---ジェインとローウッド慈善院オーナー、ミスター　・ブロックルハーストとの面接場面です。
４
「悪い子を見るほど悲しいことはない。悪い子が死んだらどこに行くか知っているかね？」
「地獄へいきます」わたしは答えた。
「そうならないためにはどうすればいいのかね？」
「体に気をつけて、死なないようにします」
「きみは朝晩お祈りをしているかい？」
「はい」
「聖書は読むかね？」
「たまに」
「好きかね？」
「ヨハネの黙示録とダニエル書、創世記。それからサムエル記は好きです。出エジプト記も好きなところがちょっとありますし、列王記と歴代志にも、好きなところがあります」

２２
ある朝、もう帰っていいとエルザは言った。「あなたがしたくださったことと控えめな態度に感謝しているわ。明日、わたしは大陸に向けて出発します。修道院に入るの。ローマ教会の教義を受け入れて修道女になるのよ」「あなたにぴったりの仕事ね」

---ミスター・ロチェスターには、書類上の、気が狂ってはいるが妻がいます。一緒にいれば、その社会的地位は情婦です。ジェインは、妻と情婦を区別します。愛があっても情婦にはなりません。ジョン牧師との間では、助手と妻を区別します。彼には愛がないので妻にはなりません。
３１
一日目、何もない粗末な教室で、わたしは喜びと落ち着きと満足感を覚えただろうか？自分に正直に答えるならノーだ。わたしは無知と貧困、そして自分の周囲で見聞きしたものの品のなさにとまどっていた。
　だが、ミスター・ロチェスターの情婦としてフランスに同行し、マルセイユという愚人の天国で奴隷のように暮らすのと、イギリスの真ん中で、村の学校の校長として自由で正直な生活を送るのとではどちらがいいだろう？そこまで考えたところで、わたしはドアを開けて家の前に広がる静かな野原を見た。


---キリスト者の信仰告白、ジェインは外観の変貌したロチェスター卿の膝の上にいます。
３７
ミスター・ロテェスターはわたしの言葉には耳も貸さず、先を続けた。「あなたはわたしを信仰心のない男だと思っているでしょうが、今わたしの心は感謝の念でいっぱいです。わたしは間違っていた。神の正義は当然の経過をたどり、わたしには多くの災難が降りかかりました。わたしは自分の力を誇りにしていましたが、今はそんなものには何の意味もない。最近、わたしは自分の運命に神の手がかかわっているのを感じるようになりました。良心の呵責や後悔を覚え、改悛したいと思うようになりました。ときどきお祈りもしています。四日前、わたしは不思議な気分に襲われました。不機嫌に代わって悲しみが訪れたのです。その晩わたしは寝る前に、早くこの世を離れて、ジェインに再会できるかもしれない別の世界に迎えられますようにと祈りました。わたしは自分の部屋にいました。窓から入ってくる夜風がわたしを落ち着かせてくれました。あなたに会いたくてしかたがなかったのですよ。ジェイン！　わたしは、もう充分長いあいだみじめな思いをしたのではないかと神に問いました。わたしが耐えてきたものはすべて、わたしの罪に対する償いだと認め、これ以上は耐えられないと祈りました。わたしの心の唯一の願いが自然に唇から飛びだしました。“ジェイン！　ジェイン！　ジェイン！”と」
「それを声に出しておっしゃったのですか？」

---この知的な恋愛小説は、このような文章で終わります。イエス・キリストの来臨について、深い造詣が認められます。
３８
ミスター・セント・ジョンはインドに行った。一生独身を通すだろう。彼の仕事は終わりに近づいている。いずれ、高潔で忠実な神のしもべが主のもとに帰ったことを知らせる手紙が、知らない人からわたしのもとに届くだろう。でも泣くことはない。ミスター・セント･ジョンが恐怖のうちに最後を迎えることはないだろうから。彼の言葉がそれを裏づけている。

〈わが主は前もってわたしに通告してくださっている。日々、その通告は明瞭さを増しながら、“わたしがあなたのもとに行く日は近い”と語っている。そしてわたしは応えるのだ。“お待ちしております。主イエス・キリストよ！”と〉

この言葉の意味は、本文の中でミスター・セント・ジョンが語った言葉や、さまざまの登場人物の中にも隠されています。
　

赤字部分が小説からの引用
2011/1/3(月)　笹倉正義