「溶接の神さま」ミスター・オオグロ

「このハナクソが」と、大黒さんは笑いながら、このフレーズを連発した。わたしは溶接は工業高校時代にちょっとかじっただけだった。何にも知らないから、返す言葉はなかった。わたしは大黒さんの組み立てる自走式溶接機のスケッチをした。それが彼の心をわたしに向けることになった。わたしのスケッチは、彼の記録に役立ったらしい。 わたしは事務方（じむかた）だが、地すべり抑止のために使用する鋼管杭（こうかんぐい）の商品、Gパイルの発注元はお役所だ。お役所相手の場合は、「資格」がものを言う。だから、溶接技術者の資格試験に取り組んだ。そして資格を取得したがそれは役に立たないことになった。人事異動が決まったからだった。

下向きアーク溶接と横向きの二つの実技試験では、生まれたばかりの子供の顔を思い浮かべてがんばったのだった。 この「Gパイル」での出張が一番多く、そこは日本を北から南まで、防災対策の予算がつく、地すべり抑止が必要なところだった。

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ページ制作者：笹倉　正義
2018/6/22、23