（７）神託の歴訪

7-1その後私は順次にさまざまの人を歴訪した、7-2そうして私は他の憎悪を我身に招いたことを認めて、7-3かつ悲しみかつ憂えたのだった。7-4しかもなお私は、7-5神の言葉が何物よりも尊重されねばならぬことを思った。7-6それで私は、7-7神託の意味を明らかにするために、7-8進んで、7-9識者の評あるすべての人の許に行かなければならぬと考えたのだった。7-10ところが、アテナイ人諸君、私は誓っていうが−−−7-11なぜなら諸君には真実を語らなければならないから−−−、7-12私は実際ほぼ次の如きことを経験したのである。 7-13即ち神意に従って探求した結果、7-14私は、最も令名ある人々はほとんどすべて最も智見を欠き、7-15これに反して尊敬せらるること少なき他の人々がむしろ智見において優れていることを認めた。7-16で、私は私の漂浪について諸君に語らなければならない、7-17それは実に辛酸の連続ともいうべきものであったが、7-18結局ただ神託の覆すべからざることを明らかにしたに過ぎなかった。 7-19すなわち政治家の次に私は詩人を、7-20悲劇詩人や酒神頒歌詩人（ディチュラムボス）やその他の詩人を訪問した。7-21今度こそは私が彼らよりも愚昧であることの証拠を、7-22現場において指摘し得えるだろうと思いながら。7-23そこで私は、彼らの作品中最も苦心したと思われるところのものを取りあげて、それが何を意味するかをきき質した。7-24これ一つには、同時に彼らから何かを学びたいと思ったからでもある。7-25さて、諸君、私は諸君に真実を告げることを恥じる。7-26しかも私は告げなければならない。 7-27すなわちその席に居合わせたところの人はほとんどすべて、7-28それらの作品について作者その人以上の説明を与え得たのである−−−−と、7-29こういっても決して過言ではあるまいと思う。7-30かくてここでもまた私は間もなく、7-31詩人が詩作するのは知恵によるのではなくて、7-32むしろ預言者や巫女（みこ）のように、7-33一種の自然的素質と神徠（しんらい：かみからくる）とによることを悟った。7-34けだしこれらの人もまた多くの美しいことを語りはするが、7-35しかし自ら語るところの信義については何らの理解もないのである。 ---自らの知恵と言葉によって語らない、言葉は神から来る、それが預言者の本質である。人間の知恵によらないものこそ神託である。ソクラテスは、書記をする奴隷を持てず、また、著作があればそれを読んだ人が自分を超えるかもしれない。神託をくつがえすようなことをしてはならない。 7-36詩人もまたほとんど同じような状態にあると私には思われた。7-37同時に私は、彼らがその詩才の故に、他の事柄についても−−−7-38事実しからざるにもかかわらず−−−7-39世界最大の知恵をもって自ら任じていることを認めた。7-40かくて私は、私が政治家たちよりも優れているとちょうど同じ点において、7-41これらの人達よりも優れていることを思いながら、7-42彼らからも去ったのである。 ---このプラトンの著作で知る限り、ソクラテスはうぬぼれの強い性格だったように感じる。

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2014/10/17 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義 通称：オリジナル教会