１２．彼女の １２．彼女の
| 12-1それからホロフェルネは銀の器を並べてある部屋に彼女を入れ、自分の食事の給仕をさせぶどう酒を飲ませようとした。12-2だがユディトは言った、「それを食べることは辞退いたします。それは罪を犯す機会となるかもしれませんから。私には自分で持ってきた物だけで十分です」。12-3「食べ物が不足してきたら、それと同じような物をおまえにあげることができるだろうか」とホロフェルネは言った、「われらのうちにはおまえの民は一人もいないが」。12-4「ご主人、ご安心ください、あなたの下女のこの私がすべての食べ物をなくすまでに、主は私をつかってみ旨を果されます」。 12-5ホロフェルネの幕僚は彼女を定めの幕屋に連れていった。彼女は夜半までそこで眠った。暁の白み始めるより早く起き出した彼女は、12-6ホロフェルネにこう伝えさせた、「ご主人、祈りをしたいので下女（ユディトのこと）がこの陣営を出るのを許せと命じてください」。12-7ホロフェルネは番兵に彼女を自由にさせてやれと命じた。彼女は陣営に三日とどまった。夜になるとベトリアのくぼ地へ出て、前哨兵の陣地のある泉で身を洗い、12-8ふたたび陣営に上ると、わが民の子らを救うために私の計画を果させたまえ、とイスラエルの神なる主に祈り続けた。12-9一度身を清めて立ち返った彼女は、夜の食べ物が運び込まれるまで自分の幕屋にこもっていた。 ---何度も書くが、イスラエルはアッシリヤによって滅亡されられた北王国の名前である。滅亡するまでの彼らの神はバアルである。イスラエルではバアルイズムがとられ、バアルを信仰しない者はひどい目にあわされたのである。バアルイズムの目的は、イスラエルの民がイスラエルの神殿とその神に立ち返ることのないようにするためである。今、作者は、イスラエルをエルサレムの神に返そうとして、これを書いているのである。 もちろん、この物語の執筆の時代は、南王国ユダが滅亡し、その８０年後に捕囚から帰還した者たちが、ユダヤ人を形成して以降のことになる。モーセの律法とエルサレム神殿を核としたユダヤ人として十二部族がまとめようとした運動の一環である。 物語では、イスラエル（のユダヤ人）がアッシリヤの圧迫を受けているとか、支離滅裂のことが書いてるが、それはわざとであろう。人々は、内容の舞台設定が大うそと知っていて、喜んでこの話を聞くのである。真面目な人物とか、物語はおもしろくないのである。 12-10四日め、ホロフェルネは宴を開き、任務についている者を除いて幕僚を招いた。12-11そして、自分の身辺の仕事をしている重臣のバゴアスに言った、「おまえのところにいるヘブライ人のあの娘をここに呼んで、ともに飲食するように承知させにいってくれ。12-12あの女とまじわらずにここから出させるのはわれわれの恥だ。われわれがあの女にそれを承知させられなかったらよい物笑いになる」。 12-13そこで、バゴアスはホロフェルネのもとを去ってユディトのところにいった、「こんなに若く美しい人に、＜私の主人のもとにいってください＞とたのんでよいでしょうか。あなたは彼の前の上席を与えられ、私たちとともに喜びのぶどう酒を飲み、今日からでもナブコドノゾルの王宮に住んでいるアッシリア人の娘の一人のようになれます」。12-14「私は主人に反対できるような人間でしょうか。あの方の気にいることなら、私はすぐそれをしましょう。そのことは私の死の日まで喜びのもととなりましょう」。 12-15彼女は立ち上がり、服をつけ女らしい飾りものもつけた。女中が彼女の先に立った。女中はホロフェルネの前の地の上に羊の毛の敷物をしいた。それは彼女が毎日使うようにとバゴアスから与えられたものだった。彼女は食事のためにそこに身をのべることができた。12-16ユディトは入ってきて、そこに腰をおろした。その彼女の姿にホロフェルネは魂を奪われ心をときめかした。彼は彼女と寝たいと欲望を燃やした。彼女を見た日以来、彼は誘惑するときをうかがっていた。 12-17彼は言った、「飲んで、われわれと喜びをともにせよ」。12-18「ご主人、喜んで飲ませていただきます、私は生まれてから今日ほど命がありがたいと思ったことはありません」。12-19彼女は女中の準備したものを受け取り、そして彼の前で食べかつ飲んだ。12-20ホロフェルネは彼女の魅力に心を奪われた。こうして彼は生まれてから飲んだことのないほど酒量をすごした。 |
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