１１． １１．
| 大祭司職を毎年金で買うように 11-1その後まもなく、王の後見人であり親戚であり国務相であったリジアは起ったできごとに憂え、11-2八万人ぐらいの兵と全騎兵を集めた。彼はエルサレムの町の住民をギリシャ人にかえ、11-3また、神殿にも異国の民の神殿と同じように税を課し、大祭司職を毎年金で授けるものにしようと考えて、ユダヤ人に向けて兵を進めた。11-4彼は何千何万の歩兵と何千の騎兵と八十頭の象に頼みをかけ、神のみ力を念頭におかなかった。 ---捕囚からエルサレムに帰還したエリートたちは、新たにユダヤ人を形成して生き残りを図った。ペルシャの王威の下、王政復古はありえなかった。ユダヤ人の政治の最高責任者は総督、神事の最高権威は大祭司であった。総督はペルシャ王の代官のようなものであったから、ギリシャ王になってからどうなったかは分からない。いつの間にか、大祭司がユダヤ人の王のような扱いになっているが、それは祭司マタティアとその子たちのリーダーシップと犠牲とにより、ユダヤ人自身に推された結果である。この下巻の作者は、あえて言うなら、そこをごまかしている。 ---アレキサンダーの国の人々の末裔である王やリジアは、ゼウスなど人形（ひとがた）の神を祀っている。 11-5こうして彼はユダヤに入り、エルサレムからほぼ五スコイノス離れたところにある堅固なベト・ズルに近づいて包囲した。11-6マカバイとその兵はリジアが自分たちの各砦を攻めにきたと知ったとき、イスラエルを救うために天使が主から送られるようにと、嘆願と涙でもって民とともに祈った。11-7マカバイ自身はだれよりも早く武器を取り、兄弟たちを助けるために、自分とともに危険に飛び込む者はないかと言った。 黄金の武器の騎兵 11-8彼らがまだエルサレムの近くにいたとき、まっ白な服をつけ黄金の武器をふりかざしている一人の騎兵が現れて先頭に立った。11-9彼らはみなあわれみ深い神を祝し、人間だけではなく狂暴な猛獣や鉄の城壁さえ攻めとれるほどその意気は大いにあがった。11-10彼らは隊形を整えて進んだが、その先頭には天からの協力者が立っていた。 11-11彼らはししのように敵に襲いかかり、一万一千の歩兵と一千六百の騎兵を倒し、その他の兵を敗走させた。11-12敵の大部分は傷を受け武器を失い、命からがら逃げのびた。リジアも恥辱のうちに逃げてやっと命をとりとめた。11-13リジアは愚か者ではなかったので、その敗北をふりかえり、ユダヤ人には強大な神が味方についておられるから無敵であることを悟った。 11-14そこでユダヤ人にこう知らせた。すなわち、公正なことについては調停をとる、王を説いて彼らの友人になるようにさせるなどだった。11-15マカバイは公共の幸福だけを考えたので、リジアの申し出に応じた。彼がユダヤ人のために書面でリジアに要求したことを、王はすべて承認した。 ---ユダヤの見えない神と人の形を模したギリシャの神々の軋轢はあるものの、この文書には至るところにこのような神がかりが書かれている。マカバイの戦功を薄めてしまうこのような書き方は、同じレビの功績を妬む者の立場を表していると思われて損である。自分たちはなにもせず、仕事をしたものの結果を、神のおかげに転化してしまうのだ。これは一つの雛形とも言える。歴史上、他人の功を消してしまおうと考えた者は、星の数ほどいるのだ。 ユダヤ人への手紙 11-16リジアがユダヤ人にあてた手紙は次のようなものであった。「リジアはユダヤの民の健康を祈る。11-17あなたたちの使者のヨハネとアブサロンがここに同封する要求書を私たちに渡し、その書面に記されていることを確認してくれるように頼んできた。11-18私は王に知らせるべきことを知らせた。王は承諾できることを承諾された。11-19もしあなたたちが公益のためにその誠実を持ち続けるなら、私も将来あなたたちに目をかけるつもりである。11-20ある詳細な点についてはあなたたちの使者と私の使者とがみなとともに相談しあうようにと命令した。11-21あなたたちに健康が恵まれるように。百四十八年、ディオスコリンツィオの月二十四日」。 ---まるでヨハネの手紙１、２、３のようで、中身が無い・・・。 リジアへの手紙 11-22アンティオコの手紙は次のようなものだった。「アンティオコ王は兄弟リジアの健康を祈る。11-23われわれの父が神々の列に加わったいま、われわれはこの国に属する者が平和のうちにくらしを立てられるようにと切望している。11-24さて、ユダヤ人が私の父ののぞみに反しヘレニズム（ギリシャイズム）に移ることを承知せず、独特の慣習を保とうとし、独特の律法に従うことを許可してほしいと言っていることを聞いた。11-25われわれはユダヤの民も平安に生きることを望むのであるから、彼らに神殿を返し先祖の制度に従って自治をとってよいことにしようと決定した。11-26そんなわけで、あなたは契約を結ぶために彼らに使者を送ればよいと思う。ユダヤ人はそれによってわれわれの決定を知り、安心し快く自分の任務にはげむだろう」。 ユダイズムとヘレニズム ヘブライズムとギリシャイズム ---ユダヤ教の強制がユダイズムというのだったらギリシャ文化の強要はギリシャイズムであるはずが、ここではヘレニズムになっている。 ヘレニズムのヘレンが、アレキサンダー大王がペルシャ王に勝ち領土を併合した地域を支配したギリシャ・マケドニヤ系の人々を指していて、それ以前のギリシャ・マケドニヤの土着の人々を意味しない、ということなら話は分かる。彼らは異教徒の地を支配しているが、民衆の文化を許せば、混血の民が増えて、先進的なギリシャ文化衰退につながると考えてもおかしくない。それは、捕囚の民がエルサレムに戻った時の民族の混血の様を見て驚いたのと同じである。 【参照：Wikipedia】 ヘレーン（Héllēn, ヘッレーン）は、ギリシア神話の人物である。デウカリオーンとピュラーの息子で、古代ギリシア人の名祖とされる。古代ギリシア人は自分たちをヘレーンの一族（ヘレーネス）と自称した。 長母音を省略してヘレンとも表記される。 （マカバイの書下） 8-1さて、マカバイのユダとその仲間はひそかに村に入り親戚を呼び集めた。ユダイズムを固く守っていた人々も加わって、その数は六千人ほどになった。 ユダヤ人への手紙 11-27ユダヤの民にあてた王の手紙は次のとおりだった。「アンティオコ王はユダヤ人の議員と人民の健康を祈る。11-28あなたたちが健康であることはわれわれの望みである。われわれも健康でいる。11-29さて、メネラオはあなたたちがそれぞれの仕事の場に帰りたいと望んでいることを知らせてきた。11-30クサンティコの月の三十日までにここを去る者には保護を約束する。11-31またユダヤ人に食べ物について自分の慣習に従ってよいし、以前どおり自分の律法に従って生活してよい。これを保証する。彼らの中で無知ゆえに犯した罪はどんなことでもとがめ立てしない。11-32私はあなたたちを安心させようとして、すでにメネラオを送った。11-33健康を祈る。百四十八年、クサンティコの月十五日」。 ユダヤ人への手紙 11-34ローマ人も次のような手紙をユダヤ人に送った。「ローマ人の使者、クィント・メニオとティト・マンリオはユダヤの民の健康を祈る。11-35王の親戚リジアがあなたたちに許可したことについてはわれわれもそれを許可する。11-36リジアが王に知らせようとしたことについてはそちらでよく調査した上、ただちに人をわれわれのもとに送れ。われわれはそれを知った上で、あたたたちの利益のために王に伝言する。われわれは今、アンティオキアに行こうとしているからである。11-37あなたたちの意向が何であるかを知らせるために、急いで人を送れ。11-38健康を祈る。百四十八年、クサンティコの月十五日」。 |
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