（３）歴史物語の独立性

3-1本書の記述は、3-2帝国の軍隊が3-3武装した難民の大群に圧倒されるところから始まり、3-4イタリヤ統一が成就（じょうじゅ）して3-5王国創立宣言が3-6国民議会によって採択されるところで終っている。3-7「解体から統一まで」という副題はそういう意味だが、3-8このような時代の切り方もまた、3-9ストーリーを編むための一つの便法でしかないことはもちろんである。

3-10しかし、私にとっては、3-11この約１５００年の時間を記述の対象とした意味は3-12はっきりしているのである。3-13イタリヤに統一国家が存在しなかった3-14その十五世紀間を歴史=物語として記述しようとすることによって、3-15国家的統一性に安易かつ無自覚に依存する習慣を3-16排除することができる。3-17それは、各国史という3-18今はもはや恣意的・便宜的でしかない枠組みから脱却するための、3-19一つの準備運動になるであろう。

3-20ただここには、「解体から統一へ」というストーリーの3-21大枠を決めることによって生ずる一つの欠陥がある。3-22民族の悲願としての国家的統一、3-23歴史の目的としての国民国家の形成というイデオロギーに、3-24ストーリーを従属させる危険がある。3-25そうなれば、その１５００年間の3-26イタリヤ人の豊かで実り多い営みが、3-27イタリヤという国家の歴史の3-28単なる前史（ぜんし）として記述されることになってしまう。3-29この期間に国家的統一への希求が存在したことは確かな事実であり、3-30それが時とともに重要性を増して、3-31歴史の動力となったこともまた確かである。3-32だがそれは、ストーリーの中からいわば湧き出てくる要素でなければならず、3-33あらかじめ設定された超越的・絶対的な3-34目標であってはならないのである。
 
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2014/9/1、2016/3/17、3/23 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義
通称：オリジナル教会
Webキリスト教マニュアル「笹倉キリスト教会」製作者
2017/1/26