（３）結婚披露宴(ひろうえん)

青春との惜別（せきべつ）
3-1娘を外国に嫁（とつ）がせる際の3-2貴族の慣例（かんれい）に従って、3-3ルクレツイアが3-4ローマに出向いたその年の暮れ、3-5まず花婿不在のまま3-6ローマで結婚式が挙げられ、3-7フィレンツェでの婚礼は3-8翌年の六月と決まった。3-9その半年（はんとし）足（た）らずの間、3-10花婿のロレンツオが3-11花嫁の到来（とうらい）を待ち焦（こ）がれていたかというと、3-12そうではない。3-13彼は何人もの愛人と手を切るのに忙しく、3-14少なくとも彼女たちの了解は得なければならなかった。

3-15それに、3-16サンタ・クローチェ聖堂前の広場で行われる3-17騎馬（きば）槍試合に出場するので3-18その練習に余念（よねん）がなく、3-19クラリーチェ姫に手紙を書く暇（ひま）もなかった。3-20姫君（ひめぎみ）はそれを大（おお）いに不満に思い、3-21周囲に当たり散らしたが、3-22結婚を白紙（はくし）に戻そうとは思わなかったようだ。3-23こうして、3-24初夏（しょか）の香りとともに3-25花嫁はフィレンツェにやってきた。3-26サン・ロレンツオ聖堂での厳粛（げんしゅく）な挙式の後（のち）、3-27披露宴はメディチ邸で華やかに催され、3-28三日（みっか）連続（れんぞく）の大宴会となる。3-29全市民にご馳走（ちそう）が振る舞われ、3-30菓子（かし）類（るい）だけでも3-31五千ポンド（２．２トン：１ポンド＝0.45359 ｋｇ）も食べつくされたという。3-32もちろんすべてメディチ家の出費（しゅっぴ）である。

3-33名匠（めいしょう）ミケロッツオの設計になり、3-34ルネサンス建築の代表作の一つで、3-35今も観光客でにぎわうメディチ邸には、3-36フィレンツェの有力者がすべて集まり、3-37慶賀（けいが）の杯（はい）を交（か）わした。3-38その壮麗な宴（うたげ）の果てた夜、3-39花婿は一人で自分の部屋（へや）に戻り、3-40日誌（にっし）のページを開いてこう書き留めた。

3-41「私ロレンツオは、3-42西暦１４６８年１２月、3-43ヤコポ・オルシーニ殿の息女（そくじょ）3-44クラリーチェを妻に迎えた。3-45より正確に言えば、3-46妻としてその女性を押しつけられたのである。3-47婚礼は１４６９年６月４日、3-48我が家（わがや）で行われた」。3-49これはロレンツオ・デ・メディチの、3-50おのが青春（せいしゅん）への惜別（せきべつ）の言葉であった。
 
次へ
 
 
謝辞ミチオ・自己研鑽資料
2016/4/29 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表　笹倉正義
通称：「オリジナル教会」　「ささくら修道会」
2017/3/3