ルカ福音書の成立

 
 
ルカはローマ軍の兵営のあるカペナウムに奴隷の身分で住んでいた。イエスさまもナザレを出て同じ町に住んでおられた。そのルカが二つの報告書を書いた。あて先は匿名のテオピロであった。最初の一通には、イエスさま出生の秘密「処女受胎」が書かれていた。もう一通には、使徒に働く聖霊の力が書かれていたが、その時期は最初のものからずーっと後であった。最初は冒頭に、「テオピロ閣下」と書かれ次のものでは、「テオピロよ」と呼びかけた。後者では時の隔たりが大きく、二人の信仰の証のゆえに、文書にその名を冠しただけかもしれない。

１．最初のものは西暦３４年ごろに書かれている。「二人の間に成就された」内容である。
２．次のものは、西暦６２年ごろに書かれている。パウロに焦点をあてたものである。
３．ローマの大火災が西暦６４年に起こり、キリスト教徒が集団放火犯とされた。
４．ほどなくして、ユダヤ戦争が起ったが、エルサレムが陥落した西暦７０年に、終わった。
　　神殿は痕を残さぬよう徹底して破壊された。土着のユダヤ人は、エルサレムの地獄絵
　　を見、神殿と土地とを失った。彼らに残されたのは、書かれたものと、
　　レビ人の記憶による「聖書」それだけであった。

５．キリスト教徒に対するユダヤ人の敵対は力を失い、ローマ皇帝による弾圧がこれに代
　　わった。皇帝はキリスト教が奴隷階級に急速に広がるのを危惧したのである。
　　その数は、皇帝に第二の出エジプトを連想させた。

６．巻物の福音書
「福音書」朗読は、ルカとマルコの文書が使われていたが、集会での利便性を考慮して、羊皮紙片から巻物に写本、編集された。「ルカによる福音書」は、ルカの全文書が均等に二巻に配分された。第一巻には、ルカ文書にマルコ文書を補い、単独でルカとマルコが読めるようにされた。また、ユダヤ戦争の悲劇を、イエスの言葉をかりて未来形で挿入し、永遠に残そうとした。ローマ当局には、それと知られぬように、表現を工夫した。
 
 
戻る
異邦人による聖書の物語
 
 
 
2011/3/26 笹倉キリスト教会
2024/9/2