１６．エリコの変 １６．エリコの変
| ケンデベオ将軍 （マカバイの書上） 15-38王はケンデベオを海岸地方の司令官と定めて歩兵と騎兵をゆだね、15-39彼にユダヤに向かって陣を移し、ケドロンを固め、その門を閉じ、民を攻めよと命じた。王はその間にトリフォンを追った。 今私は年をとった 16-1そのころヨハネはゲゼルを出発し、父シモンにケンデベオのことを知らせに行った。16-2シモンは上の二人の子ユダとヨハネを呼んで言った、「私と兄弟たちと父の家の者は若いときから今日までイスラエルのために戦い、イスラエルを救うことに成功した。16-3だが、今私は年をとった。おまえたちは天のおかげで年のさかりにきている。だから、私と兄弟たちに代わって国のために戦いに行け。天がおまえたちを助けてくださる」。 マタティアの孫の時代へ 16-4彼は二万のよりぬきの兵と騎兵をその地から選んでケンデベオに軍を進め、モディンで一夜を過した。16-5朝、兵を進めて平原に出ると、敵の歩兵と騎兵の大軍がこちらに向かってくるのが見えた。双方の間には小川が流れているので、16-6ヨハネは敵を前にして兵を止めた。兵は川を渡るのをためらっていたので、ヨハネは先頭に立って渡り人々があとに続いた。16-7敵の騎兵の数が多かったので、彼は兵を二つの隊に分け、騎兵を歩兵の中に置いた。16-8らっぱが鳴りわたった。ケンデベオは軍隊とともに敗走し、その兵は傷つき倒れ、残りの者は砦に逃げた。16-9ヨハネの兄弟ユダも傷ついたが、ヨハネはケンデベオが建て直したケドロンまで逃げる兵を追った。16-10敵はアゾトの平原の塔に逃げたが、ヨハネは塔に火をつけた。こうして二千人ほどの敵が死に、自分は無事ユダヤにもどった。 エリコの変 16-11アブボの子プトレマイオはエリコ平原の長官となった。彼は大祭司の娘婿だったので、16-12多くの銀や金を持っていて、16-13その国を手中に握ろうと野心を燃やし、シモンとその子らを滅ぼそうと計った。 ---このプトレマイオは、セレウコ王朝アンテオコ王の官吏である。 16-14そのころ、シモンは町に必要な物を調べるために地方をめぐった。百七十年の十一月、サバトの月、シモンはマタティアとユダとともにエリコに下った。 16-15アブボの子は自分が築いたドクという小さな砦に彼らを迎え大宴会を開いたが、実はある人々をそこに待ち伏せさせてあった。16-16シモンとその子らがぶどう酒に酔ったとき、プトレマイオとその家来どもは武器をとって宴会の部屋にいるシモンとその二人の子を襲い、彼らと家来たちを殺してしまった。 16-17彼は善に報いるに悪をもってしたのだった。16-18そののち、プトレマイオはことの次第を王に書き、兵を送って自分を助けてくれるように、またその国と町の支配をまかせてくれるようにと頼み、16-19ヨハネをも殺そうとしてゲゼルに何人かの人を送りこんだ。彼はそこの軍隊の指揮官に手紙を送り、金や銀やその他の贈り物をするから自分のもとにくるようにと言った。16-20また、エルサレムの神殿の山を占領しようとして他の兵も派遣した。 ヨハネの弔い合戦 16-21ところが、ある人がそれに先立ってゲゼルにいるヨハネのもとに走り、彼の父と兄弟たちが死んだことを告げ、「あなたも殺そうとして人を送りました」と言った。16-22これを聞いてヨハネはいたく落胆したが、自分を殺そうとしてきた人々をとらえて殺した。彼らが自分を殺そうとしているのを知ったからである。 16-23ヨハネが勇ましくやりとげたその他の手柄、戦い、業績、彼が造った城壁、彼のした功績の数々は、16-24父に代わって大祭司となったときからその大祭司職の記録に書き残されている。 ---残念なことに、この戦記は突如として終わっている。ともあれ、アンテオコ王朝とセレウコ王朝の確執がトリフォンの逃亡をもって終わりを告げ、国際情勢は覇権がギリシャからローマへ移る過渡期に入っていた。祭司マタティア親子の活躍によって、ユダヤ人は軍隊を保持した。孫のヨハネは、父シモンの権限を引き継ぎ、ユダヤ人に君臨し、領土拡大を目指した。しかし、律法により、王を名乗ることはできず、祭司の棟梁である大祭司の地位にとどまった。見方を変えれば、軍隊の指揮権限を持つ大祭司であり、紀元前３５年にヘロデが登場するまでのおよそ１００年間、その地位がマタティアの子孫に与えられた。 プロテスタントの聖書には収められていないこの「マカバイの書上」という戦記は、イエス・キリストの福音書を読む上で重要である。おなじみのヘロデやギリシャ人という言葉の意味が、明確化されるきっかけになると思うから。「マタイによる福音書」の幼児虐殺もマタティア一族の血脈を絶つためであれば現実的である。「ルカによる福音書」にはそのような生臭い話はないからである。 |
| （完） |
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